瞑想は、そもそも何に効くと確かめられているのか。薬とくらべたらどうなのか。体の指標は動くのか。そのうえで、耳鳴りではどうなのか。前半に瞑想そのものを調べた3本、後半に耳鳴りとの関係を調べた3本、あわせて6本を読みます。

ざっと言うと

  • 47のくじ引き試験・3,515人を集めた解析では、不安、うつ、痛みに中くらいの確からしさで改善がありました。効果の大きさは小さめから中くらいです。
  • 不安症の276人を、瞑想の講座と抗うつ薬にくじ引きで分けた試験。瞑想は薬に劣らない、という結果でした。
  • 一方で、心拍の揺らぎという自律神経の指標では、19の試験を集めても差は出ていません。
  • 耳や聞こえの問題に心理療法を使った15の研究では、終わった直後に耳鳴りの困り度が下がりました。ただし、その差がその後も続いたかは、確かめられていません。
  • 耳鳴りの75人を、瞑想としっかりしたリラクセーションに分けた試験では、両方よくなったうえで、瞑想のほうが下がり方が大きく、6か月後も差が残りました。
  • もう1本のくじ引き試験は86人が参加し、61人が終えています。両方よくなり、瞑想のほうが変化は大きい、という報告です。
集めたもの

47の試験を集めて。不安、うつ、痛みに、中くらいの確からしさがあった

瞑想の計画(プログラム)が何に効くのかを、まとめて調べたものです。集める段階で条件をひとつ置いています。比べる相手が「何もしない」ではなく、「何かをする」グループである試験だけを選びました。

  • 47件・3,515人
  • 2014年
  • 18,753件から選抜

18,753件の文献を読んで、条件に合う47件を選んでいます。比べる相手を「何かをするグループ」に限ったのは、人と会う時間や、期待そのものによる変化を、できるだけ差し引くためです。

マインドフルネス瞑想の計画では、不安、うつ、痛みについて、中くらいの確からしさで改善が見られました。ストレスや心の面の生活の質については、低い確からしさです。

それ以外の項目、たとえば気分の良さ、注意、食習慣、睡眠、体重については、効果がないという低い確からしさか、判断するには根拠が足りない、という評価でした。

元の数字:不安は効果の大きさ0.38(95%信頼区間 0.12〜0.64、8週の時点)と0.22(0.02〜0.43、3〜6か月)、うつは0.30(0.00〜0.59)と0.23(0.05〜0.42)、痛みは0.33(0.03〜0.62)。効果の大きさ0.38は、ばらつきを1としたときの差が0.38ということで、小さめから中くらいにあたります。2012年11月までの文献。研究費はアメリカ国立衛生研究所(NIH)などから。

この研究が調べていないこと

比べた相手は、運動、薬、ほかの心理療法、教育の講座などです。何もしない場合とくらべたわけではないので、ここに出ている数字は、そうした比較より小さめに出ます。

効果の大きさが小さいことと、意味がないことは、別のことです。この解析は、その意味づけまではしていません。

耳鳴りは、この解析の対象に入っていません。

原文:Meditation programs for psychological stress and well-being: a systematic review and meta-analysis. JAMA Intern Med. 2014;174(3):357–368.
doi.org/10.1001/jamainternmed.2013.13018(全文が無料で読めます)

くじ引き試験

不安症の276人。8週間の瞑想の講座は、薬に劣らなかった

瞑想を、実際に使われている薬と正面からくらべた試験です。どちらが優れているかではなく、「薬より悪くないと言えるか」を確かめる設計になっています。

  • 276人が参加・208人が完了
  • 8週間
  • 24週まで追跡
  • アメリカ・3施設

不安症と診断された大人を、くじ引きで2つに分けています。片方は、週1回8週間のマインドフルネスストレス低減法(MBSR)という講座。もう片方は、エスシタロプラムという抗うつ薬を1日10〜20mg。

不安の程度は、面接する人が点数をつけます。その人には、どちらのグループかを知らせていません。測るのは、開始時、8週の時点、そして12週と24週の時点です。

この試験では、はじめる前に「この幅より悪くなければ、劣らないとみなす」という線を決めておきました。0.495点という幅です。結果は、その線の内側に収まりました。

元の数字:不安の程度は臨床全般印象・重症度(CGI-S)という尺度で測定。あらかじめ決めた非劣性の幅は −0.495点。参加者の平均年齢33歳、75%が女性。研究費はアメリカ国立衛生研究所(NIH)の支援を含みます。

この研究が調べていないこと

「劣らなかった」は、「同じだった」でも「優れていた」でもありません。あらかじめ決めた幅の内側に収まった、という意味です。その幅をどこに置くかで、結論の見え方は変わります。

偽の薬を飲むグループも、偽の講座に通うグループもありません。

8週間、毎週決まった時間に通える人が対象です。通えなかった人のことは、この試験からは分かりません。276人のうち、最後まで終えたのは208人でした。

対象は不安症のある人です。耳鳴りのある人を調べたものではありません。

原文:Mindfulness-Based Stress Reduction vs Escitalopram for the Treatment of Adults With Anxiety Disorders: A Randomized Clinical Trial. JAMA Psychiatry. 2023;80(1):13–21.
doi.org/10.1001/jamapsychiatry.2022.3679(全文が無料で読めます)

集めたもの

心拍の揺らぎ。19のくじ引き試験を集めても、差は出なかった

心拍の揺らぎ(HRV)は、自律神経のはたらきを表すとされる指標です。本人の申告ではなく、機械で測ります。瞑想でここが動くのかを、集めて調べたものです。

  • 19件のくじ引き試験
  • 2021年
  • 安静時の測定

座って行う形の瞑想の試験を、6つのデータベースから集めています。測っているのは、安静にしているときの、迷走神経を介した心拍の揺らぎです。

集めて計算した結果、瞑想を行ったグループのほうが高くなる、とは言えませんでした。飛び抜けた値を示した1件を外して計算し直しても、同じでした。

研究どうしのばらつきは大きく、その理由を、期間の長さ、行った場所、比べた相手といった、あらかじめ決めておいた要因では説明できませんでした。

元の数字:効果の大きさ g=0.38(95%信頼区間 −0.014〜0.77)。外れ値1件を除くと g=0.19(−0.02〜0.39)。どちらも信頼区間が0をまたいでいます。ばらつきを表すI二乗値は89.12%。研究費はアメリカ国立衛生研究所(NIH)から。

いまのところ、瞑想が心拍の揺らぎを改善するという十分な根拠はない。

——結論より(要約して訳したもの)

この研究が調べていないこと

「効かないと確かめられた」ではありません。「差があるとは言えなかった」です。人数の少ない試験が多く、それが理由かもしれない、と著者は書いています。

測っているのは、安静時の心拍の揺らぎだけです。瞑想をしている最中のことや、ほかの体の指標については調べていません。

原文:The Effects of Mindfulness and Meditation on Vagally Mediated Heart Rate Variability: A Meta-Analysis. Psychosom Med. 2021;83(6):631–640.
doi.org/10.1097/PSY.0000000000000900

集めたもの

耳鳴りへの心理療法。終わった直後には差が出たが、そのあとは確かめられていない

ここから、耳鳴りとの関係になります。マインドフルネスと、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)という、比較的新しい心理療法を、耳や聞こえの問題のある人に使った研究を集めたものです。

  • 15件・のべ750人
  • うちくじ引き試験6件
  • 2022年
  • 12件が耳鳴り

15件のうち、くじ引き試験は6件で、残りの9件は、同じ人たちの前と後をくらべただけのものでした。方法の質は、多くが低いか中くらいで、人数も少なめです。

耳鳴りのある人では、聞こえに関する困り度が、終わった直後に、対照や他の治療とくらべて良くなっていました。うつと不安については、ACTのほうだけに差がありました。

ただし、その差がその後も保たれたかどうかは、保たれなかったか、そもそも調べられていませんでした。生活の質が良くなった、という根拠は見つかっていません。

この研究が調べていないこと

集められた研究の6割は、くじ引きで分けていないものです。前と後をくらべただけの研究では、時間がたったことによる変化と、治療による変化を分けられません。

終わったあと、しばらくしてからどうなるかが、この分野ではほとんど測られていない、というのがこのまとめの指摘です。効果が消えたと確かめられたわけではなく、調べられていない、ということです。

原文:A Systematic Review and Meta-Analysis Exploring Effects of Third-Wave Psychological Therapies on Hearing-Related Distress, Depression, Anxiety, and Quality of Life in People With Audiological Problems. Am J Audiol. 2022;31(2):487–512.
doi.org/10.1044/2022_AJA-21-00162

くじ引き試験

耳鳴りの75人を、瞑想と、しっかりしたリラクセーションに分けて

この分野で、いちばん設計のしっかりした試験です。比べた相手が「何もしない」ではなく、同じ回数・同じ時間のリラクセーション訓練になっています。

  • 75人
  • 週1回120分×8回
  • 16週後と6か月後
  • イギリス

慢性の耳鳴りで困っている大人75人を、くじ引きで2つに分けています。片方はマインドフルネス認知療法(39人)、もう片方は集中的なリラクセーション訓練(36人)。どちらも週1回120分を8回です。

最初に決めた測る項目は、耳鳴りの重症度と、心理的な苦痛の2つ。開始から16週後に測ります。

結果として、両方のグループで、耳鳴りの重症度、耳鳴りの大きさ、心理的な苦痛、不安、うつ、生活の支障が下がりました。そのうえで、耳鳴りの重症度の下がり方は、瞑想のほうが大きくなっていました。

この差は6か月後にも残っていました。はじめの重症度、耳鳴りとの付き合いの長さ、難聴があるかどうかにかかわらず、同じ向きだったと書かれています。

元の数字:16週後の平均差 6.3点(95%信頼区間 1.3〜11.4、p=0.016)、6か月後の平均差 7.2点、効果の大きさ0.56(0.16〜0.96)。耳鳴りの重症度は Tinnitus Questionnaire、心理的な苦痛は CORE-NR という尺度で測定。

この研究が調べていないこと

比べた相手はリラクセーション訓練で、そちらでも点数は下がっています。瞑想でなければならない、ということにはなりません。

自分がどちらのグループかは、参加した本人には分かります。伏せることのできない形の治療です。

75人、ひとつの施設での試験です。6か月より先のことは調べていません。

原文:Mindfulness-Based Cognitive Therapy as a Treatment for Chronic Tinnitus: A Randomized Controlled Trial. Psychother Psychosom. 2017;86(6):351–361.
doi.org/10.1159/000478267

くじ引き試験

86人が参加して、61人が終えた試験。両方よくなり、瞑想のほうが変化は大きかった

こちらも、瞑想とリラクセーション療法をくらべたものです。回数は5回と、上の試験より短くなっています。

  • 86人が参加
  • 61人が完了
  • 5回
  • イギリス

参加した86人のうち、マインドフルネス瞑想を終えたのが34人、リラクセーション療法を終えたのが27人でした。

最初に決めた測る項目は、耳鳴り反応質問票(TRQ)です。あわせて、不安とうつの尺度、視覚的な目盛り、健康状態の指標も測っています。

どちらのグループでも、健康状態の指標を除くすべての項目が良くなりました。点数の変化は、瞑想のグループのほうが大きくなっています。

この研究が調べていないこと

86人のうち、終えたのは61人です。3割近い人が途中でやめています。やめた人がどうなったかは分かりません。

抄録には、2つのグループの差がどれくらいで、それが偶然で説明できる範囲かどうかを示す数字が出ていません。「変化が大きかった」とだけ書かれています。

原文:A randomised controlled study of mindfulness meditation versus relaxation therapy in the management of tinnitus. J Laryngol Otol. 2017;131(6):501–507.
doi.org/10.1017/S002221511700069X

この記事に入れなかったもの

読んだけれど、今回は入れなかったものです。

耳鳴りへのマインドフルネスの系統的レビュー。7つの研究、425人ぶん。3つのくじ引き試験のうち2つで、終わった直後に差が出ています。上の2022年のまとめと内容が重なるため、外しました(Front Neurol 2019、doi)。

ヨガと瞑想と耳鳴りの系統的レビュー。5つの研究のうち4つはヨガと呼吸法で、瞑想そのものの話とは少しずれます(J Laryngol Otol 2021、doi)。

日本語では、耳鳴の診療にマインドフルネス瞑想を取り入れる話が、日本聴覚医学会の教育セミナーとして記録されています。2ページの記録で、研究の報告ではないため外しました(Audiology Japan 2019;62(5):354–355、J-STAGE)。

同じく日本語で、診療所で認知行動療法の要素を取り入れた集団教育を8人に行い、耳鳴りの困り度の平均が71.0から44.3に下がった、という報告があります。瞑想そのものではなく、比べる相手もいないため、今回は外しました(Audiology Japan 2024;67(2):151–158、J-STAGE)。

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