よく噛んで食べなさい、と言われます。ただ、噛むと体の中で何が起きるのかは、あまり説明されません。口の中で起きているのは、砕くことだけではないようです。噛むと唾液が出て、食べものは飲みこめる塊にまとめられます。そして、そのあいだに腸からホルモンが出て、脳に「もういい」と伝わります。ひと口を15回噛んだときと、40回噛んだとき。同じ食事なのに、食べた量が11.9%違っていました。はじめに、口の中と、そこから体に届くところを3本。つづいて、噛む回数と食べる速さを4本。最後に、噛む力が落ちたその先を2本。あわせて9本を読みます。
ざっと言うと
- パンやセロリを噛んだときのほうが、味のないフィルムを噛んだときより、唾液が多く出ていました。噛む速さを変えても、出る量は変わりません。
- 殺菌のうがい薬を3日使った15人では、上の血圧が2.3mmHg高くなりました。唾液のなかで起きていた変化が止まったためです。
- お腹の手術のあとにガムを噛んだ人では、腸が動きだすのが10時間ほど早くなっていました。飲みこんでいないので、栄養は入っていません。
- ひと口を40回噛んだ日は、15回の日にくらべて、食べた量が11.9%少なくなりました。空腹を伝えるホルモンも下がっています。
- 工場で何段階も加工した食事を1週間続けた9人では、体重が1.1kg多く増え、1日に813kcal多く食べていました。カロリーあたりの噛む回数が少なくなっています。
- 23の研究を集めると、早く食べる人とゆっくり食べる人で、体格の目安に1.78の差がありました。
- 日本の3,287人では、早食いで、しかも満腹まで食べる人が太っている割合は、どちらもしない人の3倍ほどでした。
- 75歳以上の269人では、噛む力の弱い人ほど、食べているものの種類が少なくなっていました。豆、野菜、海藻、ナッツです。
- 歯を失った本数が多い人ほど、頭のはたらきが落ちる割合が高い値でした。ただし入れ歯を使っている人では、その結びつきが見えなくなっています。
そもそも噛むこととは
噛むことは、食べものを小さく砕くことだと思われがちです。実際には、それだけではありません。
ひと口ぶんを口に入れると、歯、舌、頬、あご、そして唾液が、いっせいに動きます。歯がすりつぶし、舌と頬がそれを歯の上に戻し、唾液が混ざって、ばらばらだったものがひとつの塊にまとまる。飲みこめる形になって、はじめて喉のほうへ送られます。
この「唾液が混ざる」というところが、思っているより多くの仕事をしています。
唾液にはぬめりのもと(ムチン)が入っていて、口の中のあらゆる面に薄い膜をつくります。噛むとき、飲みこむとき、しゃべるときの、すべりをよくする役です。味も、唾液がなければ分かりません。味のもとになる物質は、唾液にとけてはじめて、舌の上の味を感じる器官まで届きます。
消化も、口の中で始まっています。唾液にはでんぷんを分解する酵素(アミラーゼ)が入っていて、ごはんやパンのでんぷんを、噛んでいるあいだから切りはじめます。ごはんを長く噛んでいると甘くなるのは、このためです。
守る仕事もあります。唾液は酸を中和します。食べもののなかの酸も、胃から上がってきた酸も、薄めて流します。さらに、唾液のなかには歯をつくっているミネラルがぎりぎりまでとけていて、歯の表面から少し溶け出したぶんを、戻すことができます。細菌やウイルスやカビの働きを抑える成分も入っています。
口の中の傷が、皮膚の傷よりずっと早くふさがることにも、唾液が関わっていると考えられています。ここには、思っていたのと違う話がありました。ネズミの唾液には、傷の修復に関わる成長因子がたくさん入っています。犬や猫が傷をなめるのは、それで説明がつきます。ところが人の唾液では、同じ成分の濃さがネズミの10万分の1ほどしかありません。では人では何が働いているのか。細胞を使った実験で見つかったのは、ヒスタチンという成分でした。もともとは、口の中のカビを抑える成分として知られていたものです。
その唾液は、じっとしていても少しずつ出ていますが、噛むとぐっと増えます。しかも、増え方は噛むものによって違いました。この記事の1本目が、そこを測っています。
そして、噛むという動作そのものが、口から遠いところまで届きます。手術のあと、腸はしばらく動かなくなります。そこでガムを噛んでもらう。飲みこむわけではないので、栄養は一切入りません。それでも、腸が動きだすのが早くなっていました。3本目に置いてあります。
もうひとつ、噛むことには「量を決める」という役目があります。満腹かどうかは、胃がふくらんだかどうかだけで決まるのではありません。食べものが口と胃腸を通っていくあいだに、腸からホルモンが出て、血に乗って脳に届き、そこで「もういい」という感じが生まれます。この伝達には時間がかかります。噛む回数を増やすとその時間が稼げるのか、それとも別のことが起きているのか。4本目からの試験が、そこを見ています。
数字の目安を、先に2つ置いておきます。ひと口を15回から40回に増やすと、その食事で食べる量が11.9%少なくなりました。歯を1本失うごとに、頭のはたらきが落ちるリスクが0.014ずつ上がっていました。どちらも、この記事に出てくる数字です。
そして、いまの暮らしでは、噛む回数は自分で決めているようでいて、食べものの側で決まってしまうところがあります。やわらかく作られたものは、噛む回数が少なくて済みます。5本目が、その話です。
最後に、いちばん意外なところを。
唾液が運んでいるのは、食べものの成分だけではありません。野菜、とくに葉ものや根菜には、硝酸塩という成分が入っています。これを食べると、いったん体に吸収されたあと、その一部がわざわざ唾液のなかに集められます。舌のおくにいる細菌が、それを亜硝酸という形に変え、飲みこんで胃に入ると、一酸化窒素という気体になります。この気体には、血管をゆるめる働きがあります。殺菌のうがい薬でその細菌を減らすと、上の血圧が上がりました。2本目に置いてあります。
出典:Dawes C ほか The functions of human saliva: A review sponsored by the World Workshop on Oral Medicine VI. Arch Oral Biol. 2015;60(6):863–874. doi.org/10.1016/j.archoralbio.2015.03.004(唾液の働きをまとめた総説。粘膜をうるおす、微生物や食べかすを流す、ムチンが食塊形成と嚥下と発話のすべりをよくする、味物質をとかして味蕾に運ぶ、アミラーゼででんぷんを分解する、酸を緩衝する、歯のミネラルで過飽和になっていてエナメル質を守る、抗菌・抗ウイルス・抗真菌の成分を含む、口の傷がふさがるのを助ける。題名にあるとおり、World Workshop on Oral Medicine VI の主催によるものです) / Oudhoff MJ ほか Histatins are the major wound-closure stimulating factors in human saliva as identified in a cell culture assay. FASEB J. 2008;22(11):3805–3812. doi.org/10.1096/fj.08-112003(人の唾液ではEGFとNGFの濃度がげっ歯類の約10万分の1。高速液体クロマトグラフィーで分けた画分を細胞の実験にかけ、ヒスタチン1と2を主な因子として特定したもの。細胞を使った実験で、人に試したものではありません)
パンを噛んだときと、味のないフィルムを噛んだとき。出てくる唾液の量が違った
まず、口の中で何が起きているのかを測った1本です。唾液は、噛めば同じだけ出る、というものではないようです。
- 10人
- 耳の下の唾液腺から集めた唾液
- 水・フィルム・セロリ・パン
- 1990年・アメリカ
10人に、いろいろなものを口に入れてもらい、そのあいだに出てくる唾液を集めました。集めたのは、耳の下にある唾液腺(耳下腺)から出てくるぶんです。試したのは、水で口をうるおす、味のないフィルムを噛む、セロリを噛む、パンを噛む、パンを噛まずに口に入れておく、の5とおりでした。
パンやセロリを噛んだときのほうが、味のないフィルムを噛んだときより、出てくる唾液が多くなりました。食べものかどうかで、差がついています。
噛む速さのほうは、出る量に関係していませんでした。速く噛んでも、ゆっくり噛んでも、同じです。
でんぷんを分解する酵素(アミラーゼ)も、同じ形で動いていました。濃さは変わらず、出てくる量が増えます。食べものを噛んだときのほうが多く、セロリよりパンで多く、小さいパンより大きいパンで多くなりました。
著者は、この違いは食べものの成分というより、噛む力や乾き具合、表面積といった、物理的な違いによるのかもしれない、と書いています。
元の数字:10人、片側の耳下腺から出る唾液を採取。刺激は水、パラフィルム、セロリ、パン(2つの重さ)、パンを噛まずに保持するの5条件。唾液の分泌は咀嚼の速さとは無関係。パンとセロリの咀嚼は、パラフィルムより高い分泌速度。たんぱく質とアミラーゼは、濃度ではなく分泌の速度が上がっていました。
この研究が調べていないこと
10人の小さな試験で、集めたのは片側の耳下腺から出る唾液だけです。
唾液が増えることと、体に何かが起きることは、別の話になります。
原文:Mackie DA, Pangborn RM. Mastication and its influence on human salivary flow and alpha-amylase secretion. Physiol Behav. 1990;47(3):593–595.
doi.org/10.1016/0031-9384(90)90131-M
殺菌のうがい薬を3日。上の血圧が2.3mmHg高くなった
唾液が運んでいるのは、食べものの成分だけではないようです。噛むことから少し離れますが、唾液そのものの働きが見える1本です。
- 15人
- 高血圧の薬を飲んでいる人
- 3日間・入れかえて
- 2015年・オーストラリア
野菜に含まれる硝酸塩は、体に吸収されたあと、一部が唾液のなかに集められます。それを口の中の細菌が亜硝酸に変え、飲みこむと胃で一酸化窒素という気体になる。この気体が血管をゆるめる、という道すじが知られています。この試験は、その途中を止めたら何が起きるかを見たものです。
参加したのは、高血圧の薬を飲んでいる15人。平均年齢は65歳でした。3日間、殺菌成分の入ったうがい薬を使う期間と、水を使う期間の両方を、順番をくじ引きで決めて体験しています。
うがい薬の期間には、口の中で硝酸塩が亜硝酸に変わる働きが下がりました。唾液のなかの亜硝酸が減り、変わりきれなかった硝酸塩のほうが増えています。
そして、上の血圧が2.3mmHg高くなりました。下の血圧には差が出ていません。
元の数字:15人、平均65歳、無作為化クロスオーバー試験。3日間の抗菌うがい薬の使用で、口腔内の硝酸から亜硝酸への還元が低下(p=0.02)、唾液中の亜硝酸が低下(p=0.01)、唾液中の硝酸が上昇(p<0.001)、血中の亜硝酸は低下の傾向(p=0.09)。収縮期血圧は水の期間より2.3mmHg高い値(95%信頼区間 0.5〜4.0、p=0.01)。拡張期血圧(p=0.4)と、血中のcGMP(p=0.7)には差なし。
この研究が調べていないこと
15人の小さな試験で、期間は3日です。
対象は、高血圧の薬を飲んでいる人たちでした。
原文:Bondonno CP ほか Antibacterial mouthwash blunts oral nitrate reduction and increases blood pressure in treated hypertensive men and women. Am J Hypertens. 2015;28(5):572–575.
doi.org/10.1093/ajh/hpu192
手術のあとにガムを噛む。腸が動きだすのが10時間ほど早かった
噛むという動作が、口から遠いところまで届いている1本です。飲みこまないので、栄養は一切入りません。それでも体が動きました。
- 81の試験・9,072人
- 手術のあとにガムを噛む
- 2014年6月までの文献
- 2015年
お腹の手術のあと、腸がしばらく動かなくなることがあります。イレウスと呼ばれる状態で、お腹が張り、痛みや吐き気が出て、退院も遅れます。
この総説が集めたのは、手術のあとにガムを噛んでもらうくじ引き試験です。81の試験、9,072人ぶんが集まりました。
噛んだ人では、最初にガスが出るまでが10.4時間早く、便が出るまでが12.7時間早くなっていました。お腹の音が戻るまでも5.0時間早く、入院の長さは0.7日短い値です。
手術の種類で分けると、大腸の手術でいちばん差が大きく、ガスまで12.5時間、便まで18.1時間でした。帝王切開では7.9時間と9.1時間です。
ガムは飲みこみません。栄養はひとつも入っていません。それでも腸が動きだした、ということになります。噛むという動作が、脳と、脳から内臓へ伸びる神経を通じて、消化管に「始まるぞ」と伝えている。そういう説明が立てられています。
元の数字:2014年6月までの文献から81試験9,072人。最初の排ガスまでの時間は全体で10.4時間短い値(95%信頼区間 −11.9〜−8.9)、大腸手術12.5時間(−17.2〜−7.8)、帝王切開7.9時間(−10.0〜−5.8)、その他の手術10.6時間(−12.7〜−8.5)。排便までの時間は全体で12.7時間(−14.5〜−10.9)、大腸手術18.1時間、帝王切開9.1時間。入院期間は全体で0.7日(−0.8〜−0.5)。腸の音が戻るまでは5.0時間(−6.4〜−3.7)。多くの試験がバイアスのリスク高、または不明と判定されています。研究費はイギリス国立健康研究所(NIHR)のブリストル栄養バイオメディカル研究ユニットと、ブリストル大学の博士課程奨学金から。著者のうち数名は、この総説に含まれる試験のひとつに関わっていたと申告しています。
手術後にガムを噛むことが消化管の働きの回復を助けるという根拠が、いくらか見つかった。ただしこれまでの研究は帝王切開と大腸の手術に偏っており、その多くは小規模で質の低い試験である。
——結論より(要約して訳したもの)
この研究が調べていないこと
集まった試験の多くは小さく、質も高くないと論文自身が書いています。
回復を早めるための一連のプログラムを行っている施設では、ガムを足すぶんの差が小さくなっていました。
原文:Short V ほか Chewing gum for postoperative recovery of gastrointestinal function. Cochrane Database Syst Rev. 2015;(2):CD006506.
doi.org/10.1002/14651858.CD006506.pub3(全文が無料で読めます)
ひと口を15回噛んだときと、40回噛んだとき。食べた量が11.9%違った
ここからが、噛む回数そのものの話です。同じ食事を、噛む回数だけ変えて出しています。
- 30人(やせた16人・太った14人)
- ひと口10gを15回または40回
- 同じ献立を2回
- 2011年・中国
参加したのは若い男性30人です。はじめに、太った人とやせた人で噛み方が違うのかを調べました。太った人のほうが食べる速さが速く、食べもの1gあたりの噛む回数が少なくなっています。ひと口の大きさのほうは、同じでした。
つぎに、同じ献立を2回食べてもらいます。1回目はひと口(10g)を15回噛み、2回目は40回噛む。順番はくじ引きです。
40回噛んだときのほうが、食べた量が11.9%少なくなりました。やせた人でも、太った人でも同じです。
血のホルモンも動いていました。食後のグレリン(胃から出て、空腹を伝えるホルモン)が低く、GLP-1とCCK(どちらも腸から出て、満腹を伝えるホルモン)が高い値になっています。噛む回数が、量を決めるしくみそのものに届いていた、ということになります。
元の数字:やせた男性16人と肥満の男性14人。試験食は2200kJ(エネルギーの68%が炭水化物、21%が脂質、11%がたんぱく質)。10gのひと口あたり15回噛む条件と40回噛む条件を、別の日に実施。40回のほうが摂取エネルギーが11.9%少ない値。食後の血中グレリンが低く、GLP-1とCCKが高い値。中国の臨床試験登録 ChiCTR-OCC-10001181。
この研究が調べていないこと
1回の食事を見たもので、続けたときにどうなるかは調べていません。
参加したのは若い男性30人です。
原文:Li J ほか Improvement in chewing activity reduces energy intake in one meal and modulates plasma gut hormone concentrations in obese and lean young Chinese men. Am J Clin Nutr. 2011;94(3):709–716.
doi.org/10.3945/ajcn.111.015164
工場で加工した食事の1週間。体重が1.1kg多く増え、1日に813kcal多く食べていた
では、その噛む回数は自分で決められるのか。食べものの側が決めてしまう、という話になります。
- 9人(太りぎみの日本人男性)
- 1週間ずつ入れかえて
- エネルギーと栄養素をそろえた献立
- 2024年・日本
超加工食品という言葉があります。工場で何段階も手を加え、家庭の台所には置いていない材料(乳化剤や香料など)が入っている食品のことです。菓子パン、スナック、加工肉、清涼飲料などが当てはまります。
この試験では、太りぎみの日本人男性9人に、超加工食品でつくった献立と、そうでない献立を、1週間ずつ食べてもらいました。あいだに2週間あけて、順番を入れかえています。2つの献立は、総エネルギーと栄養素の割合をそろえてあります。そのうえで、量は好きなだけ食べてよい形でした。
超加工食品の週のほうが、体重が1.1kg多く増えました。食べた量は、1日あたり813.5kcal多い値です。
噛む回数も測られています。1kcalあたりの噛む回数は、超加工食品の週のほうが少なくなっていました。同じカロリーを、より少ない回数で口から通していた、ということになります。
元の数字:東京大学医学部附属病院で行われた無作為化・非盲検のクロスオーバー試験。9人全員が完了。超加工食品の期間は体重の増加が1.1kg大きく(95%信頼区間 0.2〜2.0、p=0.021)、1日あたりの摂取エネルギーが813.5kcal多い値(342.4〜1284.7、p=0.0041)。1kcalあたりの咀嚼回数は超加工食品の期間で有意に少ない値(p=0.016)。主要評価項目は体重変化の差、咀嚼回数はあらかじめ決められた副次評価項目のひとつです。
この研究が調べていないこと
9人の小さな試験で、参加したのは太りぎみの男性です。
噛む回数が少ないから食べすぎたのか、別の理由なのかは、この試験では分けられません。
原文:Hamano S ほか Ultra-processed foods cause weight gain and increased energy intake associated with reduced chewing frequency: A randomized, open-label, crossover study. Diabetes Obes Metab. 2024;26(11):5431–5443.
doi.org/10.1111/dom.15922
早く食べる人と、ゆっくり食べる人。23の研究を集めると、体格の目安に1.78の差があった
1回の食事ではなく、ふだんの食べ方で見るとどうなるのか。これまでの研究を集めたものです。
- 23の研究
- 大人が対象(子どもは除外)
- 観察研究を集めたもの
- 2015年・日本
体重と身長から出す体格の目安を、BMIといいます。早く食べると答えた人と、ゆっくり食べると答えた人で、このBMIの平均に1.78の差がありました。太っている人の割合でみると、早く食べる人は2.15倍です。
集められたのは、ある時点で調べた研究が中心で、噛む回数そのものではなく、食べる速さを本人に聞いたものになります。
研究ごとのばらつきは大きく、糖尿病のある人たちを対象にした研究では、関係が弱くなっていました。
元の数字:MEDLINE・EMBASE・CINAHLから23研究。早食い群と遅食い群のBMIの平均差は1.78 kg/m²(95%信頼区間 1.53〜2.04)。肥満のオッズ比は2.15(1.84〜2.51)。研究間のばらつきは大きい値でした(BMIでI²=78.4%、肥満でI²=71.9%、いずれも異質性のp<0.001)。介入研究と、子どもを対象にした研究は除かれています。
この研究が調べていないこと
集められたのは観察研究で、速く食べるから太るのかどうかは、この形では分かりません。
速さを遅くする取り組みで体重が変わるかどうかは、今後の課題だと著者が書いています。
原文:Ohkuma T ほか Association between eating rate and obesity: a systematic review and meta-analysis. Int J Obes (Lond). 2015;39(11):1589–1596.
doi.org/10.1038/ijo.2015.96
早食いで、しかも満腹まで食べる人。太っている割合が3倍ほどだった
日本の2つの地域で行われた調査です。2つの習慣が重なったところで、数字が大きくなります。
- 3,287人(男性1,122人・女性2,165人)
- 30〜69歳
- 2003〜2006年
- 日本の2つの地域
心臓や血管の病気についての健診にあわせて、食べ方を聞いています。満腹まで食べると答えたのは男性の50.9%、女性の58.4%。早く食べると答えたのは男性の45.6%、女性の36.3%でした。
満腹まで食べる人が太っている割合は、そうでない人の2.00倍(男性)、1.92倍(女性)。早く食べる人では1.84倍(男性)、2.09倍(女性)でした。
両方が重なると、数字が大きくなります。どちらもしない人とくらべて、男性で3.13倍、女性で3.21倍でした。
元の数字:3,287人。多変量調整オッズ比は、満腹まで食べることについて男性2.00(95%信頼区間 1.53〜2.62)・女性1.92(1.53〜2.40)、早食いについて男性1.84(1.42〜2.38)・女性2.09(1.69〜2.59)、両方については男性3.13(2.20〜4.45)・女性3.21(2.41〜4.29)。太っているの定義はBMI 25以上。研究費は文部科学省の科学研究費(挑戦的萌芽研究 19659168)から。利益相反の申告はないと書かれています。
この研究が調べていないこと
ある時点で一度に調べたもので、どちらが先かは分かりません。
食べ方は、本人の申告によるものです。
原文:Maruyama K ほか The joint impact on being overweight of self reported behaviours of eating quickly and eating until full: cross sectional survey. BMJ. 2008;337:a2002.
doi.org/10.1136/bmj.a2002(全文が無料で読めます)
噛む力が弱い人では、食べているものの種類が少なかった。豆、野菜、海藻、ナッツ
ここからは、年を重ねたあとの話です。噛む力を、色の変わるガムで測っています。
- 269人
- 75歳以上
- 高知県・土佐町
- 2013年・日本
噛む力は、色の変わるガムで測られました。よく噛めているほど色が変わる、という仕組みのガムです。歯科医師が判定しています。
残っている歯の数が多いほど、噛む力は高い値でした。
噛む力が弱い人では、身のまわりのことをする力と、知的な活動の点数が低くなっていました。気分が落ちこんでいる人の割合も高く、頭のはたらきを見る3つの検査(MMSE、改訂長谷川式、前頭葉機能検査)でも、いずれも点数が低い値です。
食べているものも違いました。噛む力が弱い人ほど、食べている食品の種類が少なく、とくに豆、野菜、海藻、ナッツを食べる回数が少なくなっています。
元の数字:高知県土佐町の75歳以上269人。噛む力は色が変わるチューインガムで歯科医師が評価。残存歯数と噛む力の関係はp<0.001。噛む力の低い群では、日常生活動作のうち身辺自立がp=0.029、知的能動性がp=0.021で低い値。うつとの関係はp<0.001。MMSEがp=0.022、改訂長谷川式簡易知能評価スケールがp=0.017、前頭葉機能検査がp=0.002。食品摂取の多様性(FDSK-11)はp<0.001で低い値でした。
この研究が調べていないこと
ある時点で一度に調べたもので、どちらが先かは分かりません。
ひとつの町に住む269人を見たものです。
原文:Kimura Y ほか Evaluation of chewing ability and its relationship with activities of daily living, depression, cognitive status and food intake in the community-dwelling elderly. Geriatr Gerontol Int. 2013;13(3):718–725.
doi.org/10.1111/ggi.12006
歯を1本失うごとに。ただし入れ歯を使っている人では、その結びつきが見えなくなっていた
最後は、噛む力が落ちたその先を追いかけた研究を集めたものです。そして、戻せるかもしれない、というところで終わります。
- 14の研究・34,074人
- 頭のはたらきが落ちた人は4,689人
- 時間を追って調べた研究のみ
- 2021年・アメリカ
集められたのは、同じ人を時間を追って調べた研究です。失った歯の本数が多い人では、頭のはたらきが落ちた割合が1.48倍、認知症と診断された割合が1.28倍でした。歯が1本も残っていない人では、1.54倍と1.40倍です。
本数との関係は、まっすぐな線で表せる形でした。歯を1本失うごとに、頭のはたらきが落ちるリスクが0.014ずつ、認知症と診断されるリスクが0.011ずつ上がります。
ここに、もうひとつの数字があります。入れ歯を使っている人にしぼって計算すると、この結びつきは1.10まで下がり、はっきりした差とはいえない範囲に入りました。
著者は、失った歯を早めに補うことが、歯を失ったことに関わる頭のはたらきの低下を抑えるかもしれない、と書いています。
元の数字:6つのデータベースを2020年3月1日まで検索。メタ分析に入ったのは14研究、34,074人、頭のはたらきが落ちた人4,689人。相対危険度は認知機能の低下で1.48(95%信頼区間 1.18〜1.87)、認知症で1.28(1.09〜1.49)。入れ歯を使っている人では1.10で、統計的に有意ではありません。無歯顎の人では1.54と1.40。用量反応の解析は8研究で、直線モデルが支持されました。根拠の質は中程度と評価されています。研究費はアメリカ国立衛生研究所(1R56AG067619、U01DE027512)から。著者は利益相反はないと申告しています。
この研究が調べていないこと
集められたのは観察研究で、歯を失ったことが先かどうかは分かりません。
入れ歯を入れたら下がるかどうかを、実際に確かめた試験ではありません。
原文:Qi X, Zhu Z, Plassman BL, Wu B. Dose-Response Meta-Analysis on Tooth Loss With the Risk of Cognitive Impairment and Dementia. J Am Med Dir Assoc. 2021;22(10):2039–2045.
doi.org/10.1016/j.jamda.2021.05.009(全文が無料で読めます)
この記事に入れなかったもの
読んだけれど、今回は入れなかったものです。差が出なかった研究も、ここに置いておきます。
噛むことと食欲、食べる量、腸のホルモンを調べた研究を集めたもの。空腹感が下がるという結果は出ていますが、出版バイアス(良い結果のほうが論文になりやすい偏り)があり、研究ごとのばらつきも大きいため、外しました(Physiol Behav 2015;151:88–96、doi)。
食べる速さを実験で変えた22の研究を集めたもの。ゆっくり食べたほうが、その場で食べる量が少ないという結果です。本文の4本目と重なるため、外しました(Am J Clin Nutr 2014;100(1):123–151、doi)。
埼玉県草加市の8,941人を、2008年から2011年まで追いかけた研究。食べる速さとメタボリックシンドロームの関係を見ています。本文の7本目と重なるため、外しました(J Epidemiol 2015;25(4):332–336、doi)。
シュガーレスガムと虫歯の関係を調べた12の試験を集めたもの。虫歯の増え方が28%少ないという結果ですが、研究ごとのばらつきが大きく、質も中程度と評価されているため、外しました(JDR Clin Trans Res 2020;5(3):214–223、doi)。
福岡県久山町の60歳以上1,566人を5年追いかけた研究。残っている歯の数で4つに分け、認知症になる割合を見ています。本文の9本目と同じ方向の結果で、重なるため外しました(J Am Geriatr Soc 2017;65(5):e95–e100、doi)。
試す前に
試してみたいものが見つかった場合は、現在かかっている医師に確認してください。服用中の薬との相互作用や体調については、その医師が最も正確に判断できます。
