湯船にほぼ毎日つかる人は、20年のあいだに心臓や脳の病気になった人が3割ほど少なくなっていました。寝る1〜3時間前に湯を出た晩は、寝つきも早くなっていました。一方で日本では、入浴中に亡くなる人が年に約1万9千人と推計されています。その事故は、寒さで血圧が急に変わる、いわゆる「ヒートショック」だけでは説明しきれません。湯の中で体が熱くなりすぎた結果ではないか、という見方が出てきました。そして熱すぎる入浴は、入浴前の部屋の寒さと結びついていました。はじめに、湯につかると体に何が起きるのかを並べます。そのあと、体にいいことを4本、事故が重なっていた条件を4本、順に読みます。

ざっと言うと

  • 湯船に2週間つかった期間は、シャワーだけの2週間より、疲れとストレスの点数が低くなっていました(33人)。
  • 10分以上つかって寝る1〜3時間前に湯を出た晩は、寝つくまでが12〜13分ほどでした。入らなかった晩は18分です(1,094人)。
  • ほぼ毎日つかる人は、週2回以下の人より、心臓と脳の病気が3割ほど少なくなっていました(3万76人・20年)。
  • 冬も毎日つかる高齢者は、3年のあいだに介護が必要になった人が3割ほど少なくなっていました(1万3,786人)。
  • 入浴中の救急4,593件では、胸の痛みはまれで、意識がぼんやりすることと、高い体温が目立ちました。
  • 鹿児島で入浴中に亡くなった2,689人では、ひとり暮らしの人の死亡が、家族と暮らす人の4.6倍でした。
  • 全国11万人では、平均気温が2℃前後の日の死亡が真夏の日の約10倍でした。暖かい県ほど、その差が大きくなっていました。
  • 入浴前の部屋が寒い人ほど、湯の中で体の表面が熱くなり、血圧と脈が上がっていました(1,479人)。

そもそも湯船とは

日本の湯船は、深い浴槽に肩までつかる形です。東京ガスが首都圏の2,600人にたずねた調査があります。冬の湯の温度は40〜42℃が7割、つかる時間は平均13.7分でした。冬には、およそ7割の人が毎日入浴しています。

湯につかると、体には主に3つの力がかかります。

ひとつめは、温かさです。体の芯の温度が上がると、体は熱を逃がそうとして皮膚の血管を広げます。広がった血管に血を送るため、脈が速くなります。

ふたつめは、水の圧です。肩まで湯につかると、足やおなかにたまりがちな血が、水に押されて心臓のほうへ戻っていきます。

みっつめは、浮く力です。湯の中では体が軽くなります。

眠りとも関わっています。人は、体の芯の温度が下がっていくときに眠くなります。湯船で上がった熱が手や足から逃げていくと、その下がり方が急になります。本文の2本目は、この「手から熱が逃げていく様子」を、皮膚の温度で測っています。

この記事では、「0.72」のような数字がよく出てきます。比べる相手を1としたときの割合で、1より小さいほど、その病気になった人が少なかったことを表します。0.72は、100人がなるところが72人くらいということです。また「9.7倍」は、いちばん少ない日を1としたときの数です。

ここから、湯船のもうひとつの顔です。日本では、入浴中に亡くなる人が年に約1万9千人と推計されています。多くは冬で、多くは高齢者です。

入浴中の事故というと、「ヒートショック」という言葉がよく使われます。暖かい部屋から寒い脱衣所へ、そして熱い湯へ。その温度差で血圧が急に変わり、心臓や脳の発作が起きる、という説明です。

ところが、この言葉には医学の決まった定義がありません。奈良県立医科大学の研究者たちが言葉の出どころをたどっています。もとは建築や住宅設備の分野で、断熱の大切さを伝える言葉として使われ始めた可能性が高い、としています。

高齢者の入浴中の症状を調べた調査があります。84.2%が熱中症によるもので、「ヒートショック」とされたのは7.1%でした。救急医学・法医学・温泉医学の学会が加わった国の研究班もあります。心臓や脳の病気が関わった事故は、全体の半分以下の可能性が高いとまとめました。湯の中で体温が上がりすぎ、意識がぼんやりして湯から出られなくなる。そういう熱中症の道すじです。

ただ、見方はひとつではありません。人の体と暮らしの環境を研究してきた研究者の総説は、別の道すじを重く見ています。湯につかっているあいだに血圧が急に下がり、気を失っておぼれる道すじです。どちらの道すじでも、湯から出られなくなり、顔が湯につかることが、最後の分かれ目になっていました。本文の5本目から8本目は、そこを順に見ていきます。

出典:Tochihara Y. A review of Japanese-style bathing: its demerits and merits. J Physiol Anthropol. 2022;41(1):5.(doi。首都圏2,600人の調査は東京ガス都市生活研究所によるものの引用。研究費は日本学術振興会、利益相反なしと申告) / 田井義彬, 大林賢史, 山上優紀, 佐伯圭吾. 日本衛生学雑誌. 2026;81:25012(英題:Preventing Bathing-Related Accidents without Overemphasizing “Heat Shock”。doi。論壇。「84.2%と7.1%」は同論文が引く黒木尚長 2018、国の研究班は厚生労働科学研究の入浴関連事故の研究班。著者のうち2人が日本中央住販、1人が大和ハウス工業と顧問契約、1人がカネカと共同研究と申告) / 湯につかったときの3つの力は本文1本目の考察と Kohara K ほか. Sci Rep. 2018;8(1):8687 の序論、脈が速くなる理由は本文8本目の考察、眠りのしくみは本文2本目の考察による。

くじ引き試験

湯船の2週間は、シャワーの2週間より、疲れとストレスの点数が低かった

起。まずは同じ人たちで、湯船とシャワーを入れかえて比べた試験から始めます。

  • 健康な大人38人(解析は33人)、平均45.7歳
  • 40℃の湯に10分つかる2週間
  • シャワーだけの2週間と、同じ人で比べた
  • 2011年秋・日本

38人をくじで2組に分けました。一方は湯船の2週間のあとにシャワーの2週間、もう一方はその逆の順で過ごします。湯は40℃で、つかる時間は10分。点数は、どれも本人がつけたものです。

湯船の期間は、シャワーの期間より、疲れ・ストレス・体の痛みの点数が低くなりました。ストレスは0〜100の目盛りで、39.2と50.7です。「鏡の前で笑顔になれる」の点数は高くなっていました。

質問票で見た心の健康や人づきあいの点数も、湯船の期間のほうが良い値でした。緊張、落ちこみ、いらだちの点数は低くなっています。

体の動きやすさや、活気の点数には差がありませんでした。シャワーだけの期間でも、入る前より入ったあとのほうが点数は良くなっていました。

元の数字:100mmの目盛りで、湯船の期間とシャワーの期間の比較。疲れ42.0対52.2(P=0.028)、ストレス39.2対50.7(P=0.008)、痛み16.2対23.5(P=0.040)、笑顔74.3対68.7(P=0.016)。SF-8で全体的健康・社会生活機能・心の健康・精神的健康の要約点が高く、POMSで緊張-不安・抑うつ-落ちこみ・怒り-敵意が低い。38人のうち5人が私用で抜けた。2つの期間のあいだに休みの期間は置いていない。臨床試験登録 UMIN000006618。研究費の記載はなく、利益相反なしと申告。筆頭著者の所属は日本健康開発財団 温泉医科学研究所。

この研究が調べていないこと

点数はすべて本人の感じ方で、血圧や体温などは測っていません。自分が湯船の期間かどうかを知ったうえでの点数です。

原文:Goto Y, Hayasaka S, Kurihara S, Nakamura Y. Physical and Mental Effects of Bathing: A Randomized Intervention Study. Evid Based Complement Alternat Med. 2018;2018:9521086.
doi.org/10.1155/2018/9521086(全文が無料で読めます)

観察研究

寝る1〜3時間前に湯を出た晩は、寝つくまでの時間が短かった

承。1本目は本人の感じ方でした。ここからは、機械で測った眠りです。箱で書いた「手から熱が逃げていく様子」も測っています。

  • 奈良県の高齢者1,094人、平均72歳、2,139晩
  • 自宅でのふだんの入浴を、湯の温度・時間まで記録
  • 入浴しなかった晩と比べた
  • 2021年・日本

自宅でふだん通りに過ごしてもらい、湯の温度、つかった時間、湯を出てから寝床に入るまでの時間を記録しました。寝つくまでの時間は、手首につけた機械(体の動きで眠りを判定するもの)と、本人の記録の両方で測っています。

10分以上つかり、寝る1〜2時間前に湯を出た晩は、寝つくまでが機械で13.5分でした。2〜3時間前に出た晩は12分です。入浴しなかった晩は18分でした。本人の記録でも、30分が24〜25分になっていました。

そうした晩は、寝床に入ったあと、手の皮膚がおなかより温かい状態になっていました。体の熱が手から逃げていた、ということです。手が温かい晩ほど、寝つきも早くなっていました。

寝る1時間以内に湯を出た晩と、つかる時間が10分未満の晩は、入浴しなかった晩と差がありませんでした。

元の数字:寝つくまでの時間(中央値)、機械で入浴なし18分、10分以上つかり寝る61〜120分前に湯を出た晩13.5分(P=.021)、121〜180分前12分(P=.004)。本人の記録で30分、25分(P=.005)、24分(P=.021)。年齢や睡眠薬などをそろえた解析で、本人の記録の寝つきは14.8%と16.5%短い。湯の温度は平均40.7〜40.9℃、つかった時間の中央値は11〜13分、脱衣所の温度は平均13℃台。研究費は日本学術振興会、奈良県立医科大学、財団のほか、YKK AP、ウシオ電機、東京電力、積水化学工業、LIXIL、京セラなど住宅・設備・電力の会社からも出ており、著者のうち2人がこれらの会社から研究費を受けていると申告。

この研究が調べていないこと

入浴するかどうかは本人が決めていて、くじで割り振った試験ではありません。若い人や、眠りに悩む人で同じになるかは調べていません。

原文:Tai Y, Obayashi K, Yamagami Y, Yoshimoto K, Kurumatani N, Nishio K, Saeki K. Hot-water bathing before bedtime and shorter sleep onset latency are accompanied by a higher distal-proximal skin temperature gradient in older adults. J Clin Sleep Med. 2021;17(6):1257–1266.
doi.org/10.5664/jcsm.9180(全文が無料で読めます)

観察研究

ほぼ毎日つかる人は、20年のあいだの心臓と脳の病気が3割ほど少なかった

承。数日の眠りから、20年という長さに広げます。日本の大きな調査です。

  • 40〜59歳の3万76人(多目的コホート研究)
  • 湯船につかる回数をたずね、1990年から2009年まで追った
  • 週0〜2回の人と比べた
  • 2020年・日本

心臓や脳の病気、がんになったことのない人に、湯船につかる回数をたずね、20年近く追いました。そのあいだに、心筋梗塞や脳卒中などになった人が2,097人いました。たばこ、お酒、運動、食べもの、学歴や仕事などの違いは、計算でそろえています。

ほぼ毎日つかる人は、週0〜2回の人に比べ、心臓と脳の病気全体が0.72でした。脳卒中は0.74、脳出血は0.54です。週3回以上つかる人では、心筋梗塞などの心臓の病気が0.65でした。

はじめの5年、10年のうちに病気になった人を除いても、心臓と脳の病気全体と脳卒中の差は残りました。その後5年で高血圧になった人も、ほぼ毎日つかる人で0.80でした。

入浴中にも起こりうる心臓の突然死と、くも膜下出血は、つかる回数との関係が見られませんでした。毎日つかる人で突然死が多い、ということもありませんでした。湯の熱さ(本人の感じ方)による違いも見られていません。

元の数字:ほぼ毎日対週0〜2回で、心臓と脳の病気全体0.72[0.62〜0.84]、脳卒中0.74[0.62〜0.87]、脳出血0.54[0.40〜0.73]。心臓の病気は週3回以上で0.65[0.45〜0.94](傾向のP=0.065)。高血圧は年齢と性別をそろえて0.80[0.67〜0.96]。53万8,373人年。心臓の突然死は53人、くも膜下出血は255人。ほぼ毎日つかる人が71.9%。研究費は国立がん研究センター研究開発費と厚生労働省がん研究助成金。利益相反なしと申告。

この研究が調べていないこと

入浴の回数は、最初に一度たずねただけです。よく入浴する人には運動する人や学歴の高い人が多く、計算でそろえきれない違いが残る可能性があります。

原文:Ukai T, Iso H, Yamagishi K, Saito I, Kokubo Y, Yatsuya H, Muraki I, Eshak ES, Sawada N, Tsugane S. Habitual tub bathing and risks of incident coronary heart disease and stroke. Heart. 2020;106(10):732–737.
doi.org/10.1136/heartjnl-2019-315752

観察研究

冬も毎日つかる高齢者は、3年のあいだに介護が必要になった人が3割ほど少なかった

承。同じ向きの結果を、入浴中の事故がいちばん多い年代である高齢者で見た調査です。

  • 自立して暮らす65歳以上の1万3,786人
  • 夏と冬、それぞれの湯船の回数をたずね、3年追った
  • 週0〜2回の人と比べた
  • 2019年・日本

日常の動作を自分でこなせる高齢者に、夏と冬の湯船の回数をたずねました。3年のあいだに、介護保険で新たに要介護などの認定を受けた人を数えています。年齢や収入、病気の治療、体力、物忘れ、気分の落ちこみなど、14の違いを計算でそろえました。

3年間で、1,203人(8.7%)が認定を受けました。週7回以上つかる人は、週0〜2回の人に比べ、冬の回数で見て0.71、夏の回数で見て0.72でした。

はじめの1年のうちに認定を受けた人を除いても、0.72と0.75で差は残りました。

週3〜6回の人では、はっきりした差は出ませんでした。

元の数字:冬の回数で週7回以上0.71[0.60〜0.84]、週3〜6回0.90[0.76〜1.07]。夏の回数で0.72[0.60〜0.85]、0.91[0.75〜1.10]。違いをそろえる前の冬の数字は0.41で、よく入浴する人はもともと若く、元気な人が多かった。研究費は文部科学省、日本学術振興会、厚生労働科学研究費、日本医療研究開発機構、国立長寿医療研究センター、WHO神戸センター。利益相反なしと申告。

この研究が調べていないこと

元気だから毎日入浴できる、という逆向きの関係を、計算で取りきることはできません。

原文:Yagi A, Hayasaka S, Ojima T, Sasaki Y, Tsuji T, Miyaguni Y, Nagamine Y, Namiki T, Kondo K. Bathing Frequency and Onset of Functional Disability Among Japanese Older Adults: A Prospective 3-Year Cohort Study From the JAGES. J Epidemiol. 2019;29(12):451–456.
doi.org/10.2188/jea.JE20180123(全文が無料で読めます)

観察研究

入浴中の救急4,593件。胸の痛みはまれで、意識のぼやけと高い体温が目立った

転。ここから、同じ湯船のもうひとつの顔です。事故の現場で何が起きていたのかを、救急隊の記録から見ます。

  • 入浴に関わって救急車が呼ばれた4,593件
  • 東京都・山形県・佐賀県
  • 2012年10月〜2013年3月の冬の半年
  • 2019年・日本

入浴に関わる出動のたびに、救急隊が記録のカードを書き、受け入れた病院の医師にも診断を書いてもらいました。亡くなった人だけでなく、助けられた人まで含めて数えたのが、この研究の特徴です。

4,593件のうち、心停止が1,528件、湯船から自力で出られず助けられた人が935件でした。助けられた人の多くは、意識がぼんやりしている、力が入らない、という状態でした。胸の痛みは1〜2%です。

自力で出られなかった人の3割は、体温が38℃を超えていました。意識の乱れの重さは体温の高さと並んで動き、血圧とは結びついていませんでした。病院で心筋梗塞と診断されたのは1%ほどでした。多かったのは、一時的に意識を失うことと、脱水です。

湯船の中の心停止では、79%で顔が湯につかっていました。助けられた人では18%です。心停止は年齢とともに急に増え、80歳以上では全体の8倍を超えていました。著者らは、湯の中で体温が上がりすぎる熱中症から、おぼれに至る道すじを考えています。

元の数字:助けられた人で医師の診断にはっきりした病気が見つからなかったのは81.5%、脱水は20.4%。急性心筋梗塞は心電図で0.1%と0.7%。意識と体温の相関 r=0.27(P<0.001)、意識と上の血圧 r=0.02(P=0.40)。半年の心停止は10万人あたり全体9.84件、80歳以上83.56件。公衆浴場での心停止は少なかった。著者らは、体温の変化を試算した研究から、41℃未満で10分という入り方を挙げている。研究費は厚生労働科学研究費。利益相反なしと申告。

この研究が調べていないこと

冬の半年、3つの地域の記録です。熱中症は体に跡が残りにくく、それが原因だと確かめることは難しいと、著者ら自身が書いています。

原文:Suzuki M, Shimbo T, Ikaga T, Hori S. Incidence and Characteristics of Bath-related Accidents. Intern Med. 2019;58(1):53–62.
doi.org/10.2169/internalmedicine.0825-18(全文が無料で読めます)

観察研究

鹿児島の2,689人。ひとり暮らしの人の死亡は、家族と暮らす人の4.6倍だった

転。5本目で見えた「顔が湯につかる」ことが、誰にとって重いのかを、亡くなった人の記録から見ます。

  • 鹿児島県で入浴中に亡くなった2,689人
  • 警察と医師が死因を調べた記録
  • 2006〜2019年の14年間
  • 2023年・日本

死因を調べた記録を14年分さかのぼり、年齢、時間帯、住まい方、それまでの病気を整理しました。その日の気温とも照らし合わせています。

亡くなった人の90.0%が65歳以上で、平均は77.9歳でした。85.2%が自宅で、90.3%が湯船の中です。44.0%が夕方4時から夜8時のあいだ、52.0%が12月から2月でした。

ひとり暮らしの人の死亡は100万人あたり406.8人で、家族と暮らす人の88.3人の4.6倍でした。家族と暮らす人は、平均2時間以内に見つかっていました。ひとり暮らしの人は、見つかるまでにずっと長い時間がかかっていました。

入浴前にお酒を飲んでいたと分かったのは4.3%でした。ただ、飲んでいたかどうか分からない人が27.1%いました。解剖まで行われたのは29人、1.08%だけです。

元の数字:その日の最高・最低・平均気温と、とても強い負の相関。それまでの病気は高血圧が45.1%。著者らは、危ない気温の日に入浴を控えてもらう「警報の仕組み」を提案している。研究費は日本学術振興会(JP18K10133)。利益相反なしと申告。

この研究が調べていないこと

亡くなった人の記録で、どんな湯にどれだけつかっていたかは分かりません。ひとり暮らしの差には、見つかるのが遅れることも含まれています。

原文:Katsuyama M, Higo E, Miyamoto M, Nakamae T, Onitsuka D, Fukumoto A, Yatsushiro M, Hayashi T. Development of prevention strategies against bath-related deaths based on epidemiological surveys of inquest records in Kagoshima Prefecture. Sci Rep. 2023;13(1):2277.
doi.org/10.1038/s41598-023-29400-7(全文が無料で読めます)

観察研究

全国11万人。平均気温2℃前後の日は真夏の約10倍で、暖かい県ほど差が大きかった

転。6本目の鹿児島は、全国で見ると、意外な位置にいました。

  • 浴槽の中で溺死した11万938人(死亡票)
  • 1995〜2020年の26年、47都道府県
  • 日ごとの気温と照らし合わせた
  • 2025年・日本

死亡票(亡くなったときに国へ届けられる記録)で「浴槽内での溺死」とされた人を日ごとに数え、その日の気温と合わせました。気温と死亡の関係を、まっすぐな線だと決めつけない方法で描いています。

危険がいちばん高かったのは、1日の平均気温が1.8℃の日でした。いちばん低かった30.3℃の日の9.7倍です。男性と65歳以上で、この差が大きく出ました。

県ごとに見ると、沖縄をのぞいていちばん南の鹿児島が19.6倍、いちばん北の北海道は3.8倍でした。一年の平均気温が高い県と、二重窓の家が少ない県ほど、冬の上がり方が大きくなっていました。著者らは、外の気温よりも、家の中の温度が関わっている可能性を挙げています。

1.8℃より寒い日になると、危険はそれ以上は上がらず、少し下がっていました。

元の数字:いちばん低い日(30.3℃)を1とした最大の比 9.7[9.5〜9.9](1.8℃)。鹿児島19.6[16.2〜23.6]、北海道3.8[3.4〜4.3]。二重窓の割合が1標準偏差多いと比の大きさは0.76倍、年平均気温が1標準偏差高いと1.27倍。亡くなった場所の90.0%が住宅。研究費は日本学術振興会(23K09746)。著者らは、YKK AP、積水化学工業、LIXIL、カネカ、東京電力など住宅・窓・断熱材・電力の会社から研究費を、大和ハウス工業と日本中央住販から顧問料を受けていると申告。

この研究が調べていないこと

死亡票では、心臓や脳の病気として記録された入浴中の死亡は数えられていません。窓や気温との関係は、一人ひとりではなく県の単位で見たものです。

原文:Tai Y, Obayashi K, Yamagami Y, Saeki K. Association between outdoor temperature and bath-related drowning deaths in Japan (1995–2020): modifying factors and the role of prefectural characteristics. Environ Health Prev Med. 2025;30:55.
doi.org/10.1265/ehpm.25-00116(全文が無料で読めます)

観察研究

入浴前の部屋が寒い人ほど、湯の中で体の表面が熱くなり、血圧と脈が上がっていた

結。7本目の「家の中の温度」を、一人ひとりの家で測った研究です。そして、1本目の40℃・10分に戻ります。

  • 奈良県の40〜90歳1,479人(中央値68歳)
  • おなかの皮膚の温度を1分ごと、血圧と脈を15分ごとに24時間
  • 居間の温度も同時に測った
  • 2024年・日本

自宅でふだん通りに入浴してもらい、体につけた機械で記録しました。おなかの皮膚が37℃に達した人を「熱い湯につかった人」とし、シャワーやぬるめの湯の人と比べています。

熱い湯につかった1,169人は、平均11.9分つかっていました。上の血圧は入浴前の121.8から、入浴しているあいだは127.0に、脈は69.5から74.7になりました。おなかの皮膚が1℃熱くなるごとに、上の血圧は2.41、脈は2.99上がっていました。

入浴前の居間が寒い人ほど、湯の中で皮膚が熱くなっていました。熱い湯につかった人の入浴前の居間は平均21.1℃、シャワーやぬるめの湯の人は24.7℃です。外が寒い日でも、家の中が暖かければ、湯の中で体が熱くなりすぎることは少なくなっていました。

同じ研究者たちは別の論文で、ひとつの可能性を挙げています。冷えた体を湯で温めようとして、知らず知らず熱く長い入浴を選んでいる、というものです。1本目の試験の湯は、40℃で10分でした。

元の数字:皮膚1℃あたり上の血圧+2.41mmHg[2.03〜2.79]、脈+2.99回/分[2.66〜3.32]。居間が1標準偏差寒いと、入浴中の皮膚の最高温度が0.41℃[0.35〜0.47]高い。入浴前の居間が低いほど、つかる時間も長い傾向。考察では、41℃以上の湯で上の血圧が約10、脈が14〜20上がり、39℃以下では上がらなかったという実験室の研究が引かれている。研究費は日本学術振興会などの公的資金と財団のほか、YKK AP、ウシオ電機、東京電力、積水化学工業、LIXIL、京セラ、遠藤照明、カネカなど。著者のうち2人がこれらの会社から研究費を受けていると申告。

この研究が調べていないこと

湯の温度そのものは測っていません。ある時期を切り取った調査で、事故に至った人を追ったものではありません。

原文:Tai Y, Obayashi K, Okumura K, Yamagami Y, Saeki K. Blood pressure, pulse rate, and skin temperature during hot-water bathing in real-world settings among community-dwelling older adults: the HEIJO-KYO Study. Environ Health Prev Med. 2024;29:12.
doi.org/10.1265/ehpm.23-00320(全文が無料で読めます)

事故が重なっていた条件

この記事の論文に出てきた、事故が重なっていた条件を並べます。

  • 寒い日。1日の平均気温が2℃前後の日は、真夏の日の約10倍でした(7本目)。同じ研究者たちの別の論文では、元日が1.72倍、大みそかが1.63倍、日曜日が1.16倍でした。
  • 年齢。入浴中の心停止は、80歳以上で全体の8倍を超えていました(5本目)。
  • ひとり暮らし。ひとり暮らしの人の死亡は4.6倍で、見つかるまでの時間が長くなっていました(6本目)。
  • 湯の中で体温が上がりすぎること。自力で出られなかった人の3割は、体温が38℃を超えていました(5本目)。
  • 入浴前に、部屋や体が冷えていること。部屋が寒い人ほど、湯の中で体が熱くなっていました(8本目)。

箱で引いた総説には、消費者庁などが出している呼びかけが8つにまとめられています。脱衣所と浴室を暖める。湯は41℃以下にする。つかるのは10分までにする。肩までではなく半身浴にする。湯船から急に立ち上がらない。入浴の前後に水を飲む。家族がこまめに声をかける。体調が悪いときや、お酒を飲んだあとは入らない。

このうち「熱すぎる湯」と「長すぎる入浴」について、奈良の研究者たちは別の見方を示しています。入浴前の部屋や体が温かいと、そもそも選ばれにくくなる、というものです。冬の寒さをしのぐのを湯船だけに頼らない、という考え方です。

出典:本文5〜8本目 / 元日と日曜日の数字は Tai Y ほか. Environ Health Prev Med. 2025;30:99(doi。気温と一年の周期をそろえた値。研究費と利益相反の申告は7本目と同じ) / 8つの呼びかけは Tochihara Y. J Physiol Anthropol. 2022;41(1):5 のまとめ / 「選ばれにくくなる」は田井ほか. 日本衛生学雑誌. 2026;81:25012 の論壇。

この記事に入れなかったもの

読んだけれど、今回は入れなかったものです。差が出なかったものも、ここに置いておきます。

運動をしない若い20人を2組に分けた試験。10人が40.5℃の湯に60分つかり、体の芯の温度を38.5℃以上に保つことを、週4〜5回、8週間続けました。血管の広がりやすさ(FMD)は5.6%から10.9%に上がりました。ふだんの入浴とかけ離れた条件です。体温をここまで上げることは5本目の事故の話と重なるため、外しました(J Physiol 2016;594(18):5329–5342、doi)。

愛媛の873人を調べ、週5回以上つかる人で、動脈の硬さや心臓の負担を表す数字が低かったもの。入浴の習慣をたずねたのは測定のあとの2014年で、時期がずれているため外しました(Sci Rep 2018;8(1):8687、doi)。

3本目と同じ日本の調査で、女性1万5,927人の湯船の回数と乳がんを調べたもの。関係は見られませんでした(Asian Pac J Cancer Prev 2025;26(5):1615–1621、doi)。

うつ病の45人で、40℃の湯に週2回つかった群と、運動をした群を比べた試験。2週間後の気分の点数は、湯の群のほうが4.3点良い値でした。ただ、運動の群では23人中13人が途中で抜けていました。差を大きく見積もっている可能性を著者自身が書いているため、外しました(BMC Psychiatry 2020;20(1):536、doi)。

2本目と同じ研究者たちが、高齢者2,252人で眠りの質を見たもの。入浴した晩は、寝床にいる時間のうち眠っている割合が1.3%高くなっていました。湯が熱く、つかる時間も長いと、その割合が下がる向きがありました。2本目と重なるため外しました(Sleep Health 2025;11(6):908–915、doi)。

寝る前の温かいシャワーや入浴と眠りの試験を集めたもの。40〜42.5℃の湯を寝る1〜2時間前に、というよく聞く目安の出どころです。ただ、2本目の著者らによると、「1〜2時間前」の根拠は2つの試験です。血管性認知症と頭のけがの患者、合わせて36人で、どちらも30分つかる条件でした(Sleep Med Rev 2019;46:124–135、doi)。

緩和ケア病棟の、がんの終末期の146人で、入浴した日と翌日に疲れや気分が軽くなっていたもの。対象がこの記事の話とは異なるため外しました(J Pain Symptom Manage 2026;71(3):394–402、doi)。

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