甘酒の論文を5本読みました。何が入っているかを測ったもの、便通について人に飲んでもらったものが2本、肌について調べたものが2本。中身の話、便通の話、肌の話、の順に並べます。

ざっと言うと

  • 作る米を変えると、甘酒の中身が変わります。発芽させた米で作ると、γ-オリザノールとGABAが増えました。
  • 便通については、飲まないグループと比べた試験が1本あり、甘酒のグループで便秘の点数が下がる傾向が出ています。
  • もう1本の試験では、もともとの腸内細菌の型によって、変化のしかたが違っていました。
  • 肌については2本。片方は左の頬の水分だけ、もう片方は皮脂の量に差が出ています。調べた場所も指標も、そろっていません。

そもそも甘酒とは

甘酒と呼ばれる飲みものには、2種類あります。米麹から作るものと、酒粕から作るものです。

米麹のほうは、麹菌(アスペルギルス・オリゼー)が出すアミラーゼという酵素が、米のデンプンを分解します。その結果できたブドウ糖が甘さのもとになり、砂糖は加えません。酒粕のほうは、日本酒を搾ったあとに残るもので、甘さは足した砂糖から来ます。

成分は300以上あります。米麹のほうにはオリゴ糖とエルゴチオネイン、酒粕のほうにはレジスタントプロテインとα-エチルグルコシドが、それぞれの特徴として挙げられています。両方に共通するのがグルコシルセラミドです。

1日100mLほどを飲む量では、血糖値と体重に影響はなかった、と人の試験で確かめられている、と書かれています。

出典:Kurahashi A. Ingredients, Functionality, and Safety of the Japanese Traditional Sweet Drink Amazake. J Fungi. 2021;7(6):469. doi.org/10.3390/jof7060469 研究費は、米麹甘酒を作っている八海醸造株式会社から。著者は同社の生産と研究開発の責任者です。

成分を測った研究

発芽させた米で作ると、甘酒のγ-オリザノールとGABAが増えた

ポルトガルの研究です。玄米、白米、発芽させた米で麹を作り、それぞれ甘酒にして、中に何がどれだけ入るかを測っています。

  • 2023年
  • ポルトガル
  • 試飲した人 136人

γ-オリザノールは米ぬかに含まれる成分、GABAはアミノ酸の一種です。どちらも、発芽させたり発酵させたりすると増えることが知られています。

白米から作った甘酒では、γ-オリザノールは検出できない量でした。発芽させた米から作ると、100gあたり27.65mgになりました。GABAは、163.95mgから271.53mgに増えています。

発芽のさせ方によって、米の中のデンプンやアミラーゼの量も変わり、それがGABAのでき方に大きく影響していました。

この研究では、ポルトガルの136人に目隠しで試飲もしてもらっています。9点満点での評価は平均4.67と4.9。著者は、好みや受け入れられ方には文化の違いが関わるかもしれない、と書いています。

この研究が調べていないこと

測ったのは飲みものの中身です。人が飲んだあとに何が起きるかは、調べていません。

γ-オリザノールとGABAは、血中の脂質や血圧によいかもしれない成分として紹介されていますが、この研究がそれを確かめたわけではありません。

原文:Improving γ-Oryzanol and γ-Aminobutyric Acid Contents in Rice Beverage Amazake Produced with Brown, Milled and Germinated Rices. Foods. 2023;12(7):1476.
doi.org/10.3390/foods12071476(全文が無料で読めます) 研究費はポルトガル科学技術財団などの公的資金から。利益相反はないと書かれています。

飲まないグループと比べた試験

米麹甘酒を6週間。便秘の点数が下がる傾向が出た

在宅で療養している障害のある方を対象にした、日本の試験です。この記事で読んだ人の試験のうち、比べる相手を置いたのはこれだけでした。

  • 21人(介入10人・対照11人)
  • 6週間
  • 2023年
  • 日本

片方のグループは米麹甘酒を、もう片方は水か白湯を、6週間毎日、ふだんの食事に足して飲みます。

便秘の程度をはかる尺度の点数は、甘酒のグループで下がる傾向がありました。水か白湯のグループでは変化がありませんでした。便がやわらかすぎる割合が減った幅も、甘酒のグループのほうが大きくなっています。

論文の結論は、6週間の米麹甘酒摂取は便秘症状を軽減し、その変化には便の形の変化を伴う可能性がある、というものです。

この研究が調べていないこと

比べた相手は水か白湯で、見た目や味を似せた飲みものではありません。飲んでいる本人には、どちらか分かります。

介入10人、対照11人という人数です。「下がる傾向」という書き方は、はっきりした差までは出ていないことを示します。

出典:影山鈴美ほか「米麹甘酒が在宅療養障害児(者)の排便状況に与える影響:比較対照試験」日本臨床栄養学会雑誌 2023;45(2):122–139.
doi.org/10.60432/jjscnut.45.2_122(全文が無料で読めます・日本語) 研究費と利益相反の記載は、抄録では確認できませんでした。

1グループを追った研究

もともとの腸内細菌の型によって、変化のしかたが違った

重い障害のある子どもと大人10人に、米麹甘酒を6週間飲んでもらった試験です。便の中の細菌を、飲む前と後で詳しく調べています。

  • 10人
  • 6週間
  • 2021年
  • 日本

便秘の程度をはかる尺度の点数は、有意に下がりました。便の中では、乳酸菌の仲間が有意に増え、大腸菌やシゲラの仲間が有意に減っています。

面白いのはここからで、飲む前の腸内細菌の顔ぶれによって、参加者を3つのグループに分けています。フィルミクテスが多い5人、アクチノバクテリアが多い4人、プロテオバクテリアが多い1人。便秘の点数が下がったのは、前の2つのグループでした。ビフィズス菌は、全体でも、フィルミクテスの多いグループでも増える傾向がありましたが、アクチノバクテリアの多いグループではもともと多い状態でした。

著者は、甘酒による変化は、もともとの腸内細菌の組み合わせによって違うかもしれない、と述べています。

この研究が調べていないこと

飲まないグループがありません。10人という人数で、3つに分けると1人だけのグループもできています。

著者自身が、予備的な研究(パイロット)と位置づけています。

原文:Effects of Malted Rice Amazake on Constipation Symptoms and Gut Microbiota in Children and Adults with Severe Motor and Intellectual Disabilities: A Pilot Study. Nutrients. 2021;13(12):4466.
doi.org/10.3390/nu13124466(全文が無料で読めます) 研究費は岡山県立大学、日本医療研究開発機構(AMED)、厚生労働省の事業から。利益相反はないと書かれています。

くじ引き試験

肌の水分を8週間。差が出たのは、左の頬だけだった

乾燥が気になる健康な大人60人を、くじ引きで2つに分けた試験です。本人も、調べる人も、どちらを飲んでいるか知りません。

  • 60人
  • 118g/日・8週間
  • 2022年
  • 二重盲検

30人が米麹甘酒、30人が見た目と味を似せた飲みものを飲みます。始める前と8週間後に、肌の水分量と、肌から水分が逃げていく量を測りました。

左の頬の水分量は、甘酒のグループのほうが保たれていました。8週間での変化は、甘酒が0.19、比べた飲みものが−3.98です。

一方、肌から水分が逃げていく量には差がありませんでした。論文には「予想に反して」と書かれています。

この研究が調べていないこと

題名にあるとおり、差が出たのは左の頬です。ほかの場所については、差が示されていません。

肌のバリアの働きを見る指標には、差がありませんでした。

原文:Koji amazake Maintains Water Content in the Left Cheek Skin of Healthy Adults: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled, Parallel-Group, Comparative Trial. Clin Cosmet Investig Dermatol. 2022;15:1281–1288.
doi.org/10.2147/CCID.S366979(全文が無料で読めます) 研究費は八海醸造株式会社から。著者のうち1人は同社の生産と研究開発の責任者、4人は同社の社員です。

くじ引き試験

酒粕と米麹の甘酒を4週間。17人で、皮脂の量が偽の飲みものより下がった

同じ論文の中に、ハムスターの細胞を使った実験と、人に飲んでもらった試験の両方が入っています。

  • 17人
  • 4週間
  • 2020年
  • 二重盲検

細胞の実験では、酒粕や米麹を加えると、皮脂を作る細胞の中に脂がたまるのが抑えられました。PPARγという遺伝子の働きが下がったことが関わっているようだ、と書かれています。

人の試験のほうは、日本人女性17人が、甘酒か、見た目を似せた飲みものを4週間飲みます。甘酒のグループでは、皮脂の量が偽の飲みものより下がりました。目の下の明るさを表す数値も、偽の飲みものより上がっています。

アンケートでは、顔色、目の下のくま、髪のつや、寝起きのよさについて、甘酒のグループだけで改善がありました。

この研究が調べていないこと

17人、4週間です。アンケートの項目は、本人の感じ方によるもので、測って確かめたものではありません。

原文:Amazake made from sake cake and rice koji suppresses sebum content in differentiated hamster sebocytes and improves skin properties in humans. Biosci Biotechnol Biochem. 2020;84(7):1497–1505.
doi.org/10.1080/09168451.2020.1756734

この記事に入れなかったもの

読んだけれど、内容が重なるため今回は入れなかったものです。

中高年32人が1日35gを6週間飲んだ試験。便の形と便秘の点数が改善し、ビフィズス菌とアッカーマンシアが増えました(日本臨床栄養学会雑誌 2020;42(1):54–65、doi)。

入院中の高齢者12人に6週間飲んでもらった試験。便秘の点数が下がり、血液のアルブミンが3.3から3.4へ動きました(同誌 2022;44(4):163–179、doi)。

牛乳と麹から作る「ミルク甘酒」を40人が8週間飲んだ、二重盲検の試験。肌の弾力が上がっています。ただし別の飲みものなので外しました(J Oleo Sci 2023、doi)。

試す前に

試してみたいものが見つかった場合は、現在かかっている医師に確認してください。服用中の薬との相互作用や体調については、その医師が最も正確に判断できます。