耳鳴りと食べものについて、論文を4本読みました。前半の2本は、実際にのんでもらって確かめた試験。後半の2本は、たくさんの人の食べ方を長く眺めた研究です。確かめ方が違うと、言えることも変わります。

ざっと言うと

  • 亜鉛のサプリ。3つのくじ引き試験を集めたコクランのレビューでは、効果を示す証拠は見つかりませんでした。
  • カフェイン。80人に300mgか偽薬をのんでもらった試験では、耳鳴りの指標は変わりませんでした。
  • 11万人の女性を最長38年追いかけた研究。果物が多い人で耳鳴りが少なく、全粒穀物と豆類が多い人で多いという結果でした。
  • 15の食べものについて、観察研究を集めた解析。果物、食物繊維、カフェイン、乳製品が多い人で、耳鳴りが少なくなっていました。
くじ引き試験を集めたもの

亜鉛のサプリ。3つの試験を集めても、症状がよくなるという証拠は見つからなかった

亜鉛は、内耳のはたらきに関わる成分です。サプリが耳鳴りに効くのではないかという報告が以前からあり、コクランがくじ引き試験を集めて調べました。

  • 3件・のべ209人
  • 2016年
  • 確からしさ:とても低い

集めたのは、18歳以上の人で、亜鉛のサプリと偽薬をくじ引きで比べた試験です。3件、あわせて209人でした。

そのうち、耳鳴りの重さをきちんとした質問票で測っていたのは、高齢の方を対象にした1件だけです。この試験では、4か月後に耳鳴りが改善した人が、亜鉛の群で93人中5人、偽薬の群で94人中2人でした。差ははっきりしません。

耳鳴りの大きさを測った試験でも、8週間後、4か月後のどちらでも差は出ませんでした。重い副作用の報告は、どの試験にもありませんでした。

元の数字:改善した人の割合の比 RR=2.53(95%信頼区間 0.50〜12.70)。耳鳴りの大きさの差 −9.71dB(−25.53〜6.11)、および 0.50点(−5.08〜6.08)。いずれもGRADEの評価は very low(とても低い)。

成人の耳鳴りにおいて、亜鉛の内服が症状を改善するという証拠は見つからなかった。

——結論より(要約して訳したもの)

この研究が調べていないこと

3件は、参加者の選び方も、追跡した期間も、測り方もばらばらでした。そのため、数字をひとつにまとめる計算はできていません。試験の偏りのおそれは、中くらいから高いと評価されています。

暮らしの質、仕事への影響、不安や落ち込みの変化については、どの試験も報告していません。

原文:Zinc supplementation for tinnitus. Cochrane Database Syst Rev. 2016;(11):CD009832.
doi.org/10.1002/14651858.CD009832.pub2

くじ引き試験

カフェイン300mgと偽薬。80人で比べても、耳鳴りの指標は変わらなかった

「耳鳴りにはカフェインを控えたほうがいい」とよく言われます。それを実際に確かめた、ブラジルの試験です。

  • 80人
  • 2021年
  • ブラジル
  • 三重盲検

慢性の耳鳴りがある80人を、くじ引きで2つに分けました。24時間カフェインを断ってもらったあと、片方はカフェイン300mg(コーヒー3杯ぶんほど)の錠剤、もう片方は見た目が同じコーンスターチの錠剤をのみます。本人も、調べる人も、集計する人も、どちらか知りません。

のむ前とのんだ後に、耳鳴りの質問票、耳鳴りのつらさの目盛り、気分の質問票、それに聴力検査や、耳鳴りの音の高さと大きさを測る検査などを行いました。

結果として、カフェインは耳鳴りのどの指標も変えませんでした。気分の指標には変化がありました。

ひとつ目を引くのは、耳鳴りの質問票と目盛りの点数が、カフェインの群でも偽薬の群でも、どちらも良くなっていたことです。

カフェイン300mgは、聞こえに関する指標も、電気的な指標も、耳鳴りによる不快の程度も、意味のある形では変えなかった。

——結論より(要約して訳したもの)

この研究が調べていないこと

1回のんだ直後を見た試験です。毎日の習慣としてカフェインを増やしたり減らしたりした場合のことは、調べていません。

参加者は80人です。特定の研究費は受けておらず、利益相反はない、と書かれています。

原文:The effect of caffeine on tinnitus: Randomized triple-blind placebo-controlled clinical trial. PLoS One. 2021;16(9):e0256275.
doi.org/10.1371/journal.pone.0256275(全文が無料で読めます)

観察研究

11万人の女性を最長38年。果物が多い人で耳鳴りが少なく、全粒穀物と豆類が多い人で多かった

アメリカの看護師健康調査という、2つの大きな追跡調査です。4年ごとに食事の質問票に答えてもらい、そのあと耳鳴りが続くようになったかどうかを見ています。

  • 113,554人
  • 最長38年
  • アメリカ・女性看護師
  • 耳鳴り 22,879件

追跡した長さは、のべ264万人・年になります。そのあいだに、耳鳴りが続くようになった人が22,879人いました。

食べる量の多い順に5つのグループに分けて、いちばん多い群といちばん少ない群を比べています。

果物をよく食べていた群は、耳鳴りになった人が0.81倍でした。いちばん少ない群で100人のうち10人がなるとすると、8人ほど、という差です。反対に、全粒穀物をよく食べていた群は1.26倍、豆類は1.13倍、砂糖入りの飲みものは1.12倍でした。

健康的な食事のかたち全体としては、はっきりした差は出ていません。同じ研究班は、難聴については健康的な食べ方の群で3割低いと報告していますが、耳鳴りでは同じようにはなりませんでした。

元の数字:果物 HR=0.81(95%信頼区間 0.77〜0.85)、全粒穀物 1.26(1.20〜1.32)、豆類 1.13(1.08〜1.18)、砂糖入り飲料 1.12(1.07〜1.17)。いずれも傾向のp<0.0001。研究費はアメリカ国立衛生研究所(NIH)から出ています。

食事の内容は、耳鳴りが起きるリスクを変えるように見える。

——結論より(要約して訳したもの)

この研究が調べていないこと

食べ方を変えてもらった研究ではありません。もともとの食べ方を答えてもらい、そのあとを追いかけたものです。ですから、果物が耳鳴りを減らしたのか、果物をよく食べる人が別のところでも違っていたのかは、分けられません。

全粒穀物と豆類がリスクの高い側に出た理由も、この研究では調べていません。

対象は女性の看護師だけです。耳鳴りがあるかどうかは、検査ではなく本人の申告によります。

原文:Longitudinal study of dietary intake and risk of persistent tinnitus in 2 large independent cohorts of women. Am J Epidemiol. 2026;195(7):1906.
doi.org/10.1093/aje/kwaf277

観察研究を集めたもの

15の食べものを調べた解析。果物、食物繊維、カフェイン、乳製品が多い人で、耳鳴りが少なかった

食べものと耳鳴りについての観察研究を集めて、まとめて計算したものです。集めたのは、すべて観察研究になります。

  • 10件(うち8件を計算)
  • 2025年
  • 2024年5月までを検索

4つの文献データベースを、2024年5月まで検索しています。集まった10件のうち、8件の数字をまとめました。調べた食べものの要因は15あります。

そのうち4つで、よく食べている人ほど耳鳴りが少ない、という関連が出ました。果物が0.649倍、乳製品が0.827倍、カフェインが0.898倍、食物繊維が0.918倍です。残りの11については、はっきりした関連は出ていません。

カフェインが「多い人ほど耳鳴りが少ない」側に出ているのは、控えたほうがいいと言われることが多いのとは、向きが逆になります。

元の数字:果物 OR=0.649(95%信頼区間 0.532〜0.793)、乳製品 0.827(0.766〜0.892)、カフェイン 0.898(0.862〜0.935)、食物繊維 0.918(0.851〜0.990)。研究費は、中国国家自然科学基金、成都中医薬大学の中医耳鼻咽喉科チーム、四川省自然科学基金から出ています。

この研究が調べていないこと

集めた10件は、すべて過去の記録をさかのぼって調べた観察研究です。食べ方を変えてもらった試験は入っていません。

食べる量をどう聞いたか、耳鳴りをどう判定したかは、研究ごとに違います。

原文:Association of 15 common dietary factors with tinnitus: a systematic review and meta-analysis of observational studies. BMJ Open. 2025;15(3):e091507.
doi.org/10.1136/bmjopen-2024-091507(全文が無料で読めます)

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