めまいがしたら安静に、と思われがちです。ところが、耳の奥の平衡の器官が片側だけ弱ったあと、体がどうやって立て直していくのかを見ていくと、話は逆になります。壊れたところが元に戻るのではなく、脳が別のやり方に置きかえる形で立て直すため、実際に動いて、食い違いを何度も経験させないと進まないのです。1本目は、その立て直しを人で測った試験。2本目と3本目は、めまいに限らず、運動そのものが体と気分に何をしているのかを調べたもの。4本目からは、めまいのある人に体を動かしてもらった研究と、どれくらいやればよいのかを決めた診療ガイドライン。最後の1本は日本のもので、続けることの難しさが数字に出ています。あわせて8本を読みます。
ざっと言うと
- 前庭が関わるめまいを一生のうちに経験する人は7.4%、この1年のうちに経験した人は4.9%。経験した人の80%が、受診か、日常のことの中断か、仕事を休むかに至っています。
- 前庭神経炎の39人の試験では、30日後の体の揺れが、運動をしたグループで1分あたり3.2m、しなかったグループで16.9mでした。目の指標には差が出ていません。
- 108のくじ引き試験・23,407人を集めた解析では、運動をしたグループの転倒の回数が、対照より23%少ない値でした。とくにバランスと足腰の運動です。
- 81のメタ分析・のべ79,551人ぶんを重ねた解析では、運動をしたグループでうつと不安の点数が低い値でした。
- 片側の前庭が弱った人の39試験・2,441人を集めた解析では、めまいが減ったと答えた人が、対照より多い値でした。
- 良性発作性頭位めまい症の134人を、頭の位置を順に変える手技と、偽の手技に分けた試験。1週間後に、めまいと眼振の残っていた人が少ない値でした。
- 診療ガイドラインは、頭を動かしながら一点を見続ける運動を、慢性の片側なら1日3〜5回・合計20分以上・4〜6週間としています。頭を動かさずに目だけを動かす運動は、入れないようにとも書かれています。
- 家でインターネットを見ながら行う前庭リハビリテーションの296人の試験では、3か月後と6か月後の、めまいの点数が低い値でした。
- 日本で26人に平衡訓練を行った報告では、4週間続けられたのは14人でした。続けられた人では、日常の動作の点数が上がっています。
そもそも、めまいと前庭とは
まっすぐ立っていられるのは、3つの情報が届いているからです。目で見ている景色、足の裏や関節から届く感覚、そして耳の奥にある平衡の器官。この3つめを前庭といいます。
前庭は、聞こえをつかさどる蝸牛のとなりにあります。輪になった管が3本と、袋が2つ。管が頭の回転を、袋が傾きと、まっすぐ進む動きを感じ取ります。
この器官がしている仕事のひとつが、目を動かすことです。歩きながら看板を読めるのは、頭が揺れるたびに、同じ速さで反対向きに目が動いているからです。耳が頭の動きを感じ取り、その信号がそのまま目の筋肉に届く。考えるより速い、短い回路です。
どれくらいの人に起きるものなのか。ドイツで4,869人をふるいにかけ、1,003人に詳しく聞き取った調査があります。前庭が関わるめまいを一生のうちに経験した人が7.4%、この1年のうちに経験した人が4.9%でした。そして経験した人の80%が、受診したか、日常のことを中断したか、仕事を休んでいます。
前庭は左右に1つずつあり、ふだんは同じくらいの信号を送り続けています。片方が急に弱ると、この釣り合いが崩れます。脳は崩れを「頭が回っている」と読み取ってしまう。じっとしていても回る感じがして、目が勝手に揺れ(眼振)、体が片側に傾きます。これが、動かなくても出る症状です。もうひとつ、頭や体を動かしたときだけ出る症状があります。景色が揺れる、ふらつく、といったものです。
ここからが大事なところです。脳のほうが、この食い違いを埋め直します。前庭代償と呼ばれ、脳が自分を作り直すはたらきの、いちばんよく調べられている例のひとつです。
じっとしていても出る症状は、姿勢と目の動きが3か月ほど、まっすぐの感じ方は1年ほどで、ほぼ消えます。動いたときだけ出る症状のほうは、長く残ります。目を動かす反射そのものも、あまり戻りません。それでも多くの人は、速く頭を振っても景色が揺れるとは言わなくなります。反射が戻ったからではなく、目と頭の動かし方を新しく組み立て直しているからです。
作り直しが起きている場所は、耳のそばの神経の集まりだけではありません。小脳、視床、側頭と頭頂の皮質、海馬、体の感覚と視覚の皮質。画像で見ると、この広い範囲が関わっていて、灰白質の量まで変わっています。
そして、この作り直しには条件があります。壊れた部分が元通りになるのではなく、別のやり方に置きかえる形で進むため、実際に動いて、食い違いを脳に何度も経験させる必要があるのです。じっとしていると、置きかえる材料が入ってきません。
早いほうがよい、ともされています。脳の作り直しが集中して起きている時間の窓があり、運動はそこに重なるように行うのが望ましい、という考え方です。
もうひとつ。作り直しがうまく進まない人には、不安や気分の落ち込みを抱えている人が多いことが知られています。強すぎるストレスは、この作り直しを妨げます。この記事に運動と気分の話を置いているのは、そのためです。
出典:Lacour M, Helmchen C, Vidal PP. Vestibular compensation: the neuro-otologist's best friend. J Neurol. 2016;263(Suppl 1):S54–S64. doi.org/10.1007/s00415-015-7903-4(前庭代償の仕組みと、戻るまでの時間。著者らは利益相反がないことを明記しています。この号はドイツ連邦教育研究省の助成による特集号です。全文が無料で読めます) / Neuhauser HK ほか Epidemiology of vestibular vertigo: a neurotologic survey of the general population. Neurology. 2005;65(6):898–904. doi.org/10.1212/01.wnl.0000175987.59991.3d(ドイツの全国電話調査から4,869人をふるいにかけ、1,003人に神経耳科の聞き取り。聞き取りの特異度94%、感度84%)
前庭神経炎の39人。運動をした人の体の揺れが、30日後に5分の1だった
まず、運動そのものが体に何をしているのかです。動物で分かっていたことを、人で確かめた試験にあたります。
- 39人(運動19人・しない20人)
- 30日
- 1998年・ドイツ
- 機械で測った揺れ
参加したのは、前庭神経炎で片側の前庭が急に弱った人です。全員、30日たっても前庭の働きの低下が残っていました。くじ引きで2つに分かれ、片方は運動をします。はじめの1週間は1日90分、そのあとの3週間は自宅で1日30分。バランスの練習、慣らしの練習、そして頭を動かしながら一点を見続ける練習です。
測ったのは3つ。目のねじれ、まっすぐだと感じる向き、そして立っているときの体の揺れです。揺れは台の上に立って機械で測ります。自分で答える点数ではありません。
30日後、体の揺れの道のりは、運動をしたグループで1分あたり3.2m、しなかったグループで16.9mでした。5分の1ほどです。
一方、目のねじれと、まっすぐだと感じる向きは、2つのグループで同じように戻っていました。運動が動かしたのは、姿勢のほうだったことになります。
元の数字:30日目の総軌跡長が、運動群3.2±1.9m/分、対照群16.9±6.1m/分(分散分析、p<0.001)。目のねじれ(眼球回旋)と、主観的視覚的垂直の正常化には、2群で差なし。運動の量は、1日90分を1週間、そのあと1日30分の自宅での運動を3週間です。
この研究が調べていないこと
対象は前庭神経炎で急に片側の前庭が弱った人で、ゆっくり進む病気や、年齢による変化は入っていません。
原文:Vestibular exercises improve central vestibulospinal compensation after vestibular neuritis. Neurology. 1998;51(3):838–844.
doi.org/10.1212/WNL.51.3.838
バランスと足腰の運動を続けた人たちで、転んだ回数が少なかった。108の試験を集めて
ここからは、めまいに限らない話です。体を動かすことが、体のバランスに何をしているのかを、いちばん大きくまとめたものです。
- 108試験・23,407人
- 25か国
- 2019年
- 平均76歳・77%が女性
地域で暮らす60歳以上の人を対象にした、くじ引き試験だけを集めています。脳卒中など特定の病気にしぼった試験は外してあります。
運動と、転倒を減らすとは考えにくい対照とを比べた81試験のうち、転んだ回数を集計できた59試験で、運動をしたグループの転倒は23%少ない値でした。確からしさは高い、とされています。
論文はこれを、1年で1,000人あたり850回転ぶという前提に置き換えて示しています。その場合、195回ぶん少ない計算になります。
運動の種類でも分けています。バランスと日常の動作の運動では24%、それに筋力の運動を足した組み合わせでは34%、太極拳では19%、それぞれ少ない値でした。筋力の運動だけ、ダンスだけ、歩くだけについては、はっきりしたことは言えていません。
体に起きた困りごとも数えています。27試験が何らかの形で報告し、14試験では何も起きていません。重いものは、ひとつの試験で2件(骨盤の疲労骨折と、鼠径ヘルニアの手術)でした。
元の数字:転倒の回数の比0.77(95%信頼区間 0.71〜0.83、12,981人・59試験、高い確からしさ)。1回以上転んだ人の比0.85(0.81〜0.89、13,518人・63試験)。バランスと機能の運動0.76(0.70〜0.81、7,920人・39試験)、複数の種類を組み合わせたもの0.66(0.50〜0.88、1,374人・11試験)、太極拳0.81(0.67〜0.99、2,655人・7試験)。2018年5月2日までの文献。研究費は英国国立衛生研究所(NIHR)から。
地域で暮らす高齢者では、運動の計画が転倒の回数と、転んだ人の数を減らす。転倒を減らす運動は、主にバランスと日常の動作の運動である。
——結論より(要約して訳したもの)
この研究が調べていないこと
めまいのある人を対象にした解析ではなく、ここに出てくるのは地域で暮らす60歳以上の人の転倒です。
転倒以外のことは確からしさが下がり、生活の質にはほとんど違いがありませんでした。
原文:Exercise for preventing falls in older people living in the community. Cochrane Database Syst Rev. 2019;(1):CD012424.
doi.org/10.1002/14651858.CD012424.pub2(全文が無料で読めます)
81のメタ分析を重ねて。運動をしたグループで、うつと不安の点数が低かった
こちらもめまいに限らない話です。作り直しがうまく進まない人には不安や落ち込みが多い、と箱で書きました。そこにつながります。
- 63件のレビュー・81のメタ分析
- 元になった研究1,079件
- のべ79,551人
- 2026年
くじ引き試験を集めたメタ分析だけを集めています。慢性の体の病気がある人を対象にしたものは、話が混ざるため外してあります。子どもから大人まで、診断のついた人も、点数が高いだけの人も含みます。
運動をしたグループでは、うつの点数も不安の点数も低い値でした。どちらも、いちばん大きかったのは有酸素運動です。
細かく見ると、うつでは18歳から30歳の人と、産後の女性で差が大きく、ひとりよりも集団で、指導する人がいる形のほうが大きい値でした。不安のほうは、短い時間で、強度の低い運動と結びついていました。
元の数字:うつは効果の大きさ−0.61(95%信頼区間 −0.69〜−0.54)、不安は−0.47(−0.59〜−0.36)。効果の大きさ0.61は、ばらつきを1としたときの差が0.61ということで、中くらいにあたります。2025年7月31日までの文献。事前の登録あり(PROSPERO)。
この研究が調べていないこと
めまいのある人は、この解析の対象に入っていません。
集めたのはメタ分析で、ひとつひとつの試験にさかのぼって数え直したものではありません。
原文:Effect of exercise on depression and anxiety symptoms: systematic umbrella review with meta-meta-analysis. Br J Sports Med. 2026;60(8):590–599.
doi.org/10.1136/bjsports-2025-110301
片側の前庭が弱った39の試験。めまいが減ったと答えた人が、対照より多かった
ここで、めまいのある人に戻ります。目や頭を動かす練習を続ける方法を、前庭リハビリテーションと呼びます。
- 39試験・2,441人
- 2015年
- 2014年1月までの文献
- 地域で暮らす成人
集めたのは、病気やけが、手術のあとに片側の前庭の働きが落ちた人の、くじ引き試験です。前庭リハビリテーションを、何もしない対照や偽の方法、薬、別のやり方と比べています。
めまいの起きる頻度を見た4試験・565人では、前庭リハビリテーションのグループのほうが、めまいが減ったと答えた人が多い値でした。日常の困りごとを測る指標でも、同じ向きの差が出ています。
ひとつだけ、向きの違うところがあります。良性発作性頭位めまい症は、耳石が本来と違う場所に入り込んで起きる、頭を動かしたときの短いめまいです。これについては、体位を順に変える手技のほうが、短い期間で見ると治りが良い、という結果でした。両方を組み合わせると、長い目で見た回復には役立つ、とも書かれています。
体に起きた困りごとの報告はありませんでした。
元の数字:めまいの頻度のオッズ比2.67(95%信頼区間 1.85〜3.86、4試験565人)。日常の活動や参加の指標は効果の大きさ−0.83(−1.02〜−0.64)。良性発作性頭位めまい症では、運動を中心とした方法に対する体位の手技のオッズ比0.19(0.07〜0.49)で、手技のほうが短期の治癒率が高い値でした。
片側の末梢前庭障害に対して、前庭リハビリテーションは安全で有効な方法である、という中くらいから強い確からしさの根拠がある。ただし良性発作性頭位めまい症では、短い期間で見るかぎり、体位を変える手技のほうが優れている。
——結論より(要約して訳したもの)
この研究が調べていないこと
対象は片側の末梢の前庭が弱った人で、両側の場合や、脳の側に原因がある場合は入っていません。
やり方どうしを比べて、どれが良いかを決めるには根拠が足りないとされています。
原文:Vestibular rehabilitation for unilateral peripheral vestibular dysfunction. Cochrane Database Syst Rev. 2015;(1):CD005397.
doi.org/10.1002/14651858.CD005397.pub4(全文が無料で読めます)
頭の位置を順に変える手技。1週間後に、めまいと眼振の残っていた人が少なかった。134人
ひとつ前の解析で、短い期間なら手技のほうが、とされていたものです。診療所で、実際に偽の手技と比べています。
- 134人(手技66人・偽の手技68人)
- 2012年11月〜2015年1月
- スペインの2つの診療所
- 二重盲検
参加したのは18歳以上で、後半規管の良性発作性頭位めまい症と診断された人です。診断には、頭を倒して目の動きを見る検査(ディックス・ホールパイク法)を使っています。
くじ引きで2つに分かれ、片方は手技を1回、もう片方は形だけ似せた偽の手技を受けます。どちらのグループにも、同じ薬が同じ量で処方されています。本人にも、評価する人にも、どちらか分かりません。
1週間後、検査でめまいと眼振の両方が残っていた人の割合は、手技のグループのほうが低い値でした。
はじめの検査で眼振があった人にしぼると、めまいの強さの点数も下がっていました。眼振がなく、めまいだけだった人では、同じようにはなっていません。
元の数字:1週間後、眼振をともなう陽性の割合が手技のグループで低い(p=0.022)。はじめに眼振があった人では、10点の尺度でめまいの強さが−1.73(95%信頼区間 −2.95〜−0.51)、陽性のオッズ比0.09(0.01〜0.92)。評価は1週間後、1か月後、1年後に行われています。
この研究が調べていないこと
対象は後半規管の良性発作性頭位めまい症で、めまいのほかの原因は入っていません。
手技は訓練を受けた人が行っていて、自分で行った場合のことは調べていません。
原文:Effectiveness of the Epley manoeuvre in posterior canal benign paroxysmal positional vertigo: a randomised clinical trial in primary care. Br J Gen Pract. 2019;69(678):e52–e60.
doi.org/10.3399/bjgp18X700253(全文が無料で読めます)
では、どれくらいやればよいのか。67本を読み直して決めた、1日の分数と週数
アメリカ理学療法協会の神経理学療法アカデミーが、2016年の版を作り直したものです。運動の中身と量が、数字で書かれています。
- 67本を採用
- 2015年〜2020年6月の文献
- 6つのデータベース
- 2022年
対象は、検査で前庭の働きの低下が確かめられた成人です。片側の人も、両側の人も含みます。6つのデータベースから2015年以降の文献を探し、67本を選んで根拠の強さを評価しています。
いちばん強い根拠があるとされたのは、前庭リハビリテーションを行うこと、それ自体でした。困りごとのある人には勧めるように、と書かれています。
量も決めています。頭を動かしながら一点を見続ける練習は、急性と亜急性の片側なら1日3回、合計12分以上。慢性の片側なら1日3〜5回、合計20分以上を4〜6週間。両側なら1日3〜5回、合計20〜40分を5〜7週間ほど。バランスの練習は、慢性の片側で1日20分以上を4〜6週間としています。
入れないように、とされているものもあります。頭を動かさずに目だけを動かす運動(視線を飛ばす、ゆっくり追う)だけで、見ているものを安定させようとすること。強い根拠があり、利益より害のほうが上回る、とされています。頭を動かすからこそ、耳の器官が働くためです。
指導する人がついた形で行うことも、強い根拠があるとして勧められています。次の論文が、そこに関わってきます。
元の数字:2015年から2020年6月までの6つのデータベースの検索から67本を採用。前庭リハビリテーションを提供すべき(強い根拠)。頭部の運動をともなわない随意的なサッカードや追従眼球運動のみを、注視の安定のために含めるべきではない(強い根拠、害が利益を上回る)。監督下での実施を勧める(強い根拠)。注視を安定させる運動は、急性・亜急性の片側で1日3回・計12分以上、慢性の片側で1日3〜5回・計20分以上を4〜6週間、両側で1日3〜5回・計20〜40分を約5〜7週間(中等度から弱い根拠)。バランスの運動は慢性の片側で1日20分以上を4〜6週間(中等度の根拠)、両側では6〜9週間(専門家の意見)。研究費は米国国立聴覚・コミュニケーション障害研究所(K23 DC018303)。著者らは利益相反がないことと、編集の独立を保ったことを明記しています。
この研究が調べていないこと
対象は耳の側に原因がある前庭の働きの低下で、脳の側に原因がある場合と、検査で低下が確かめられていない人は入っていません。
原文:Vestibular Rehabilitation for Peripheral Vestibular Hypofunction: An Updated Clinical Practice Guideline From the Academy of Neurologic Physical Therapy of the American Physical Therapy Association. J Neurol Phys Ther. 2022;46(2):118–177.
doi.org/10.1097/NPT.0000000000000382(全文が無料で読めます)
家でインターネットを見ながら行う前庭リハビリテーション。6か月後も、めまいの点数が低かった
ガイドラインは、指導する人がついた形を勧めていました。では、つかない場合はどうなるのか、を調べたものです。
- 296人
- 6か月
- 2017年
- イングランド南部の54診療所
参加したのは50歳以上で、頭を動かすとひどくなるめまいのある人です。年齢の中央値は67歳、66%が女性でした。
くじ引きで2つに分かれ、片方はインターネットの自動の計画を使います。前庭リハビリテーションの運動のやり方と、めまいとのつきあい方の工夫(認知行動的なもの)が示されます。もう片方は、いつもどおりの診療です。
めまいは、めまいの症状の尺度(VSS-SF)で、はじめと3か月後と6か月後に測っています。
3か月後も6か月後も、インターネットの計画のグループのほうが、点数が低い値でした。めまいによる日常の困りごとの点数も、同じ向きでした。
回答したのは、3か月後で250人(84%)、6か月後で230人(78%)です。
元の数字:めまいの症状の尺度の差は、3か月後に2.75点(95%信頼区間 1.39〜4.12、p<0.001)、6か月後に2.26点(0.39〜4.12、p=0.02)。めまいによる日常の困りごとは、3か月後に6.15点(2.81〜9.49)、6か月後に5.58点(1.19〜10.0、p=0.01)。研究費は、英国の経済社会研究会議(ESRC)、国立衛生研究所(NIHR)、Vivensa財団から出ています。
この研究が調べていないこと
比べた相手はいつもどおりの診療で、同じ時間だけ別のことをするグループとは比べていません。
点数を答えたのは本人で、体の平衡の働きを機械で測った比較ではありません。
原文:Internet-Based Vestibular Rehabilitation for Older Adults With Chronic Dizziness: A Randomized Controlled Trial in Primary Care. Ann Fam Med. 2017;15(3):209–216.
doi.org/10.1370/afm.2070(全文が無料で読めます)
26人に平衡訓練。4週間続けられたのは14人だった
日本の耳鼻咽喉科の報告です。ここまでの話の最後に、続けられるかどうかが数字になっています。
- 26人
- 4週間
- 2006年
- 日本
めまいを主な訴えとして潤和会記念病院の耳鼻咽喉科を受診した26人に、平衡訓練(体を動かしてバランスを慣らしていく練習)を行っています。比べる相手のグループは置かれていません。
4週間の訓練を続けられたのは、26人のうち14人でした。半分ほどの人は、続けられなかったことになります。
続けられた14人では、日常の動作を点数にする評価表(156点満点)が、訓練の前の119から、4週間後の140になっていました。
体の揺れを機械で測る検査(重心動揺検査)でも、いくつかの数字が改善する傾向を示しています。ただし、すべての指標が動いたわけではありません。
元の数字:日常生活動作評価表(岐阜大式、156点満点)は119±17.6から140±10.8。重心動揺検査では外周面積と単位軌跡長に改善の傾向があり、単位面積軌跡長は変わりませんでした。
この研究が調べていないこと
比べる相手のグループがなく、時間の経過による自然な変化と、訓練による変化を分けることはできません。
点数が上がったのは続けられた14人についてで、続けられなかった12人のその後は分かりません。
原文:Effects of equilibrium training in patients with vertigo. 耳鼻と臨床. 2006;52(6):330–337.
doi.org/10.11334/jibi1954.52.6_330(全文が無料で読めます)
この記事に入れなかったもの
読んだけれど、今回は入れなかったものです。
持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)に、薬を使わない方法をあてた11の試験・518人をつなぎ合わせた解析。中心になっているのが神経を刺激する方法で、体を動かす話から離れるため、外しました(J Neurol 2026、doi)。
前庭性片頭痛の人への前庭リハビリテーションを集めた解析。片頭痛という別の入口が要るため、今回は外しました(Headache 2026、doi)。
多発性硬化症の人への前庭リハビリテーションを集めた解析。特定の病気のある人が対象のため、外しました(J Neurol 2026、doi)。
前庭神経炎のあと、脳の灰白質の量がどう変わるかを画像で追った研究がいくつかあります。箱の中で触れましたが、人数が9人から22人と少なく、比べる相手の置き方もそろっていないため、論文として並べるのではなく、箱の中の参考にとどめました(Ann Neurol 2010、doi/Restor Neurol Neurosci 2014、doi)。
日本語では、前庭リハビリテーションの実際と治療効果をまとめた総説があります。新しい結果の報告ではないため外しましたが、日本での行われ方を知るには読みやすいものです(Equilibrium Research 2024;83(6):503–508、J-STAGE)。
試す前に
試してみたいものが見つかった場合は、現在かかっている医師に確認してください。服用中の薬との相互作用や体調については、その医師が最も正確に判断できます。
