水を多めに飲むと、体に何が起きるのか。飲む量を実際に変えてもらって確かめた研究を、5本読みます。はじめの1本が全体の地図です。そのあとの4本は、腎結石、膀胱炎、体重、頭痛を、それぞれ見たものになります。
ざっと言うと
- 水を増やす試験を18本集めたレビューでは、体重の減り方と、腎結石の少なさに、はっきりした差が出ていました。
- 腎結石を経験した199人を5年追った試験では、再発した人が100人あたり12人。水を増やさなかったグループでは27人でした。
- 膀胱炎をくり返す140人が1年間、水を1.5リットル増やしたところ、膀胱炎の回数が平均1.7回。増やさなかったグループでは3.2回でした。
- 食事の前に500mLの水を飲んだ48人では、12週間で減った体重が2kgほど多い値でした。
- 頭痛のある102人が3か月、水を1.5リットル増やしたところ、「かなり良くなった」と答えた人が47%。増やさなかったグループでは25%でした。
水を増やす試験を18本集めて。体重と腎結石で、はっきりした差が出ていた
水をたくさん飲むといい、とはよく言われます。それを、実際に量を変えて確かめた試験だけを集めたものです。
- 18の試験
- 期間は4日から5年
- 2023年4月までの文献
- 2024年
体重の減り方は、水を増やしたグループのほうが44〜100%大きい値でした。腎結石は、5年で100人あたり15件少ない計算になります。
そのほかに、片頭痛、膀胱炎、糖尿病の管理、低血圧について、それぞれ1本ずつ、良い結果を示す研究がありました。
18本のうち、10本が何らかの良い結果を報告し、8本では差が出ていません。集められた試験は、1日の水の量を決めた分だけ増やす(または減らす)もので、比べる相手はふだんどおりに飲むグループでした。
元の数字:1,464件から18本を選び、15本が並行群間のくじ引き試験、3本が交差試験。くり返し出てきた主な項目は、体重、空腹時の血糖、頭痛、尿路感染、腎結石でした。
水は安く、体に起きる困りごとも少ない。ここに挙げた状態について、よく設計された研究がさらに行われるべきである。
——結論より(要約して訳したもの)
この研究が調べていないこと
集まった試験の数は多くなく、質と量には限りがある、と論文自身が書いています。
原文:Outcomes in Randomized Clinical Trials Testing Changes in Daily Water Intake: A Systematic Review. JAMA Netw Open. 2024;7(11):e2447621.
doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2024.47621(全文が無料で読めます)
腎結石を経験した199人を5年。水を増やしたグループで、再発した人が少なかった
この記事のなかで、いちばん長く追いかけた試験です。5年あります。
- 199人
- 5年
- 1996年
- イタリア
5年のあいだに再発した人は、水を増やしたグループで100人あたり12人。増やさなかったグループでは27人でした。
再発するまでの期間も違っています。水を増やしたグループが平均38.7か月、増やさなかったグループが25か月でした。1年ほどの差になります。
参加したのは、初めて腎結石を起こした人たちです。くじ引きで2つに分かれ、片方は食事を変えずに水をたくさん飲みます。もう片方は、とくに何もしません。毎年、診察と検査と画像で調べています。
元の数字:再発率は12.1%対27%(p=0.008)、再発までの平均期間は38.7±13.2か月対25±16.4か月(p=0.016)。結石のない101人とあわせて、尿の量が結石のできやすさとどう関わるかも調べています。
この研究が調べていないこと
対象は、すでに腎結石を起こした人です。結石になったことのない人が水を増やした場合は、調べられていません。
原文:Urinary volume, water and recurrences in idiopathic calcium nephrolithiasis: a 5-year randomized prospective study. J Urol. 1996;155(3):839–843.
doi.org/10.1016/S0022-5347(01)66321-3
膀胱炎をくり返す140人が、1年間、水を1.5リットル増やした
水を増やすといい、とよく言われてきたところに、実際の試験がひとつ入りました。
- 140人
- 12か月
- 2013〜2016年
- アメリカ
1年間の膀胱炎の回数は、水を増やしたグループで平均1.7回。増やさなかったグループでは3.2回でした。差は1.5回です。
全体では327回の膀胱炎が起きていて、そのうち水のグループが111回、もう片方が216回でした。抗菌薬を使った回数も、水のグループのほうが少なくなっています。
参加したのは、前の年に3回以上膀胱炎を起こし、1日の水分が1.5リットル未満だった閉経前の女性です。ふだんの水分に加えて、1日1.5リットルの水を飲みます。
元の数字:膀胱炎の回数は1.7回(95%信頼区間 1.5〜1.8)対3.2回(3.0〜3.4)、差は1.5回(1.2〜1.8、p<0.001)。参加者の平均年齢は35.7歳、前の年の膀胱炎は平均3.3回でした。
この研究が調べていないこと
対象は、膀胱炎をくり返していて、もともと水分が少なかった女性です。そうでない人のことは調べられていません。
原文:Effect of Increased Daily Water Intake in Premenopausal Women With Recurrent Urinary Tract Infections: A Randomized Clinical Trial. JAMA Intern Med. 2018;178(11):1509–1515.
doi.org/10.1001/jamainternmed.2018.4204(全文が無料で読めます)
食事の前に500mLの水。12週間で、減った体重が2kgほど多かった
飲む量ではなく、飲むタイミングを決めた試験です。毎食の前、というところが違いになります。
- 48人
- 12週間
- 55〜75歳
- 2010年・アメリカ
12週間で減った体重は、水を飲んだグループのほうが2kgほど多い値でした。減り方でいうと44%大きい計算になります。
どちらのグループも、カロリーを減らした食事をしています。違いは、毎食の前に500mLの水を飲むかどうかだけでした。
試験の最初には、水を先に飲むと、その食事で食べる量が減っていました。ただし12週間たったあとは、その差ははっきりしなくなっています。
元の数字:体重の減り方は水のグループでβ=−0.87(p<0.001)、飲まないグループでβ=−0.60(p<0.001)。試験の食事で食べた量は、開始時に水あり498±25kcal、水なし541±27kcal(p=0.009)、12週後は480±25kcalと506±25kcal(p=0.069)。研究費はアメリカ国立衛生研究所(NIH)から出ています。
この研究が調べていないこと
参加したのは、体重が多めの55歳から75歳の48人です。ふつうの食事をしている人が水だけ増やした場合は、この試験の外になります。
原文:Water consumption increases weight loss during a hypocaloric diet intervention in middle-aged and older adults. Obesity (Silver Spring). 2010;18(2):300–307.
doi.org/10.1038/oby.2009.235(全文が無料で読めます)
頭痛のある102人が、3か月、水を1.5リットル増やした
水と頭痛については、これがはじめてのくじ引き試験になります。結果は、はっきり分かれました。
- 102人
- 3か月
- 2012年
- オランダ・診療所
「かなり良くなった」と答えた人は、水を増やしたグループで47%。増やさなかったグループでは25%でした。頭痛にともなう生活の質の点数も、4.5点上がっています。
一方で、中等度以上の頭痛が起きた日数のほうには、意味のある変化は出ていません。感じ方は変わり、日数は変わらなかった、ということになります。
参加したのは、月に2回以上の中くらいの頭痛か、5回以上の軽い頭痛があり、1日の水分が2.5リットル未満だった人です。両方のグループに、ストレスと睡眠についての紙が配られ、片方はそれに加えて水を1.5リットル増やしています。
元の数字:頭痛にともなう生活の質の点数は4.5点(95%信頼区間 1.3〜7.8)の改善。10点満点で6点以上の改善を感じた人は、水のグループ47%、対照25%。中等度以上の頭痛の日数には、意味のある変化はありませんでした。
この研究が調べていないこと
頭痛の日数そのものは変わっていません。良くなったと答えた人が多かった、というところまでの結果です。
原文:A randomized trial on the effects of regular water intake in patients with recurrent headaches. Fam Pract. 2012;29(4):370–375.
doi.org/10.1093/fampra/cmr112
この記事に入れなかったもの
読んだけれど、今回は入れなかったものです。差が出なかった研究も、ここに置いておきます。
慢性腎臓病のある631人に、1年間、水を増やしてもらった試験。尿の量は1日0.6リットル増えましたが、腎機能の下がり方には差が出ませんでした(JAMA 2018、doi)。
イングランドの献血73か所・140万人の試験。もともと配られている500mLの水に、飲みものを変える、休む時間を延ばすなどを足しても、差は出ていません(Lancet Haematol 2026、doi)。
飲む水の温度を、常温・氷水・温水で変えた14人の試験。気が遠くなるまでの時間に差は出ませんでした(Clin Auton Res 2022、doi)。
メニエール病の18人が2年間、体重1kgあたり35mLの水を飲んだ日本の報告。比べた相手が、7年から14年前に同じ病院にかかっていた人たちの記録なので、今回は外しました(Laryngoscope 2006、doi)。
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