ヨーグルトを食べてもおなかが平気なのは、乳糖が減っているからだと思われがちです。ところが調べてみると、乳糖はほとんど減っていません。効いているのは、生きている菌のほうでした。ヨーグルトの論文で面白いのは、そこを確かめるための「比べた相手」の作り方です。牛乳と比べる。加熱して菌を止めたヨーグルトと比べる。乳酸を足して、酸っぱさだけをそろえた乳飲料と比べる。短い試験から、何十年も追いかけた調査へ。6本を順に読みます。

ざっと言うと

  • 菌を止めたヨーグルトと比べた24人の試験では、乳糖が消化されずに残る量が少なくなりました。
  • 日本の女子学生45人の試験では、便のなかのビフィズス菌が、酸っぱさをそろえた乳飲料の群より多くなりました。
  • 牛乳と比べた100人の試験では、24週間で肝臓の脂肪とインスリンの効きにくさが下がりました。
  • 194,458人を追いかけた調査では、乳製品のなかでヨーグルトだけが、糖尿病と逆を向いていました。
  • 184,178人の調査では、週5回以上食べる人で、血圧が高くなった人が16%少なくなっていました。
  • 896,871人ぶんの調査を集めた解析では、亡くなった人が全体で7%、心臓と血管の病気で11%少なくなっていました。

そもそもヨーグルトとは

ヨーグルトは、牛乳に菌を入れて発酵させたものです。菌が糖の一部を乳酸に変えるので、酸っぱくなり、たんぱく質が固まってとろりとします。

牛乳に入っている糖は、乳糖(にゅうとう)といいます。これを分解する酵素をラクターゼといい、赤ちゃんのころは誰でもたくさん持っていますが、大人になると減る人がいます。酵素が足りないと、乳糖は分解されないまま大腸まで届きます。そこで腸の菌が分解し、ガスが出る。おなかがゴロゴロしたり、下したりするのは、これが理由です。

ここで意外なことがあります。ヨーグルトになっても、乳糖はほとんど減っていません。牛乳と発酵乳の糖を測ったスウェーデンの調査では、ヨーグルトに残っている量は、牛乳の94〜95%でした。乳糖が減っているから平気、という話ではなかったのです。

では、なぜ平気なのか。菌が、乳糖を分解する酵素を自分の中に抱えたまま、胃を通り抜けるからです。酵素は菌の細胞に守られ、ヨーグルト自体が胃の酸をやわらげる働きもして、胃の中を生き延びます。小腸に入ると酸が弱まり、通り抜ける速さもゆっくりなので、そこで酵素が働きはじめます。市販のヨーグルトには、1mLあたり1億個ほどの菌が入っています。

つまり、ヨーグルトの正体は「菌が生きたまま入っている牛乳」です。この記事の1本目と2本目は、まさにそこを確かめた試験になっています。菌を止めたヨーグルトと比べたら、どうか。発酵していない、酸っぱいだけの乳飲料と比べたら、どうか。

体にとって何がいいのか、も並べておきます。この記事で読む試験では、乳糖が消化されずに残る量が少なくなり、便のなかのビフィズス菌が増えました。牛乳と比べた24週間の試験では、肝臓の脂肪とインスリンの効きにくさが下がっています。

何十年も追いかけた調査のほうでは、2型糖尿病になった人が1日1食分あたり17%少なくなっていました。血圧が高くなった人は16%少なく、亡くなった人は全体で7%、心臓や血管の病気では11%少なくなっています。

出典:Ohlsson JA ほか Lactose, glucose and galactose content in milk, fermented milk and lactose-free milk products. Int Dairy J. 2017;73:151–154. doi.org/10.1016/j.idairyj.2017.06.004(ヨーグルトに残っている糖の量。ヨーグルトの総ガラクトース量は100gあたり2.3〜2.4gで牛乳の94〜95%、スウェーデンの発酵乳とケフィアは1.9〜2.0gで75〜79%。研究費はスウェーデン農業科学大学から) / Savaiano DA. Lactose digestion from yogurt: mechanism and relevance. Am J Clin Nutr. 2014;99(5 Suppl):1251S–1255S. doi.org/10.3945/ajcn.113.073023(消化のしくみ。菌のラクターゼが胃の酸を生き延び、小腸で働くこと。ブルガリア菌とサーモフィラス菌が1mLあたり1億個ほど含まれること。味つきのヨーグルトでは酵素の働きがやや落ちるが、それでも十分に耐えられると書かれています)

順番で振り分けた試験

菌を止めたヨーグルトと比べて。乳糖が消化されずに残る量が、少なかった

ヨーグルトが牛乳と違うのは、菌が生きているからなのか。それを確かめるために、菌を止めたヨーグルトを相手にした試験です。

  • 24人・15日ずつ
  • 1日500g
  • 生きた菌あり・なし
  • 2000年

健康な男性24人に、ヨーグルトを1日500g、15日間食べてもらいました。片方は菌が生きているもの、片方は加熱して菌を止めたもの。同じ人が、15日の間をあけて両方を食べています。24人のうち半分は、乳糖をうまく消化できない人でした。

乳糖をうまく消化できない人では、菌が生きているヨーグルトのあとのほうが、息に出てくる水素が少なくなりました。乳糖が消化されずに大腸まで届くと、そこの菌が分解して水素が出ます。その水素は血に溶けて肺から出てくるので、息を測ると、消化されずに残った量が分かります。

乳糖を消化できる人では、血液のなかの酪酸が、菌が生きているヨーグルトのあとで高い値でした。酪酸は腸の菌がつくる短い脂肪酸で、大腸の細胞のエネルギー源になります。

一方で、血糖、インスリン、中性脂肪、コレステロールは、どちらのヨーグルトでも変わっていません。15日で動いたのは、腸のあたりまででした。

元の数字:乳糖をうまく消化できない人で、息の水素が、菌の生きたヨーグルトのあとのほうが低い値(p<0.01)。乳糖を消化できる人で、血中の酪酸が高い値(p<0.03)、プロピオン酸は高い傾向(p=0.059)。空腹時の血糖・インスリン・脂肪酸・中性脂肪・コレステロールと、500gを食べたあとの曲線下面積は、いずれも差なし。

この研究が調べていないこと

15日ずつを2回、24人の試験です。長く続けたときのことは、この試験の外になります。

原文:Chronic consumption of fresh but not heated yogurt improves breath-hydrogen status and short-chain fatty acid profiles: a controlled study in healthy men with or without lactose maldigestion. Am J Clin Nutr. 2000;72(6):1474–1479.
doi.org/10.1093/ajcn/72.6.1474

日本語

酸っぱさだけをそろえた乳飲料と比べて。便のなかのビフィズス菌が、多かった

1本目と同じ狙いの試験が、日本にもあります。今度は、発酵しているかどうかだけを変えています。

  • 女子学生45人
  • 1日100mL・4週間
  • 菌を足していないプレーン
  • 二重盲検

女子学生62人をくじ引きで2つに分け、1日100mLを4週間続けてもらいました。比べた相手が、この試験の見どころです。ヨーグルトと同じ乳の成分でつくった飲みものに乳酸を足して、ヨーグルトと同じ酸っぱさにそろえたもの。発酵していない、菌のいない「酸っぱい乳」です。

4週間のあと、便のなかの生きたビフィズス菌の数は、酸っぱい乳の群よりヨーグルトの群のほうが高い値でした。同じ乳の成分で、同じ酸っぱさ。違うのは、発酵しているかどうかだけです。

使ったのは、あとから菌を足していない、プレーンのブルガリアヨーグルトです。おなかの調子が悪い人や抗生物質を使った人は、あらかじめ除いています。最後まで残った45人(ヨーグルト20人、酸っぱい乳25人)で計算しました。

元の数字:ランダム化プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験。摂取前に2週間、摂取4週間、摂取後に2週間を置き、2週間ごとに便の菌を調べています。4週間の時点で、糞便中のビフィズス菌の生菌数が、酸乳の群より有意に高い値でした。著者には、昭和女子大学大学院生活機構研究科と、株式会社明治食機能科学研究所に所属する人が含まれています。

この研究が調べていないこと

調べているのは便のなかの菌の数で、おなかの調子そのものではありません。

原文:「ブルガリアヨーグルト摂取による糞便中ビフィズス菌の増加作用を検証するプラセボ対照二重盲検比較試験」栄養学雑誌 2013;71(4):171–184.
jstage.jst.go.jp(全文が無料で読めます)

くじ引き試験

牛乳と比べて。24週間で、肝臓の脂肪とインスリンの効きにくさが下がった

ここから期間が長くなります。比べた相手は、今度は牛乳です。

  • 100人・24週間
  • 1日220g
  • ヨーグルトか牛乳
  • 肝臓に脂肪のある女性

中国の、肝臓に脂肪がたまっていて、メタボリックシンドロームもある36〜66歳の女性100人が参加しました。くじ引きで2つに分け、片方は1日220gのヨーグルト、片方は同じ量の牛乳を24週間。最後まで続いたのは、ヨーグルト48人、牛乳44人です。

牛乳の群と比べて、ヨーグルトの群では、インスリンの効きにくさを表す指標が下がりました。空腹時のインスリンも、ブドウ糖を飲んで2時間後のインスリンも低い値です。

肝臓のなかの脂肪の割合も、3.44ポイントぶん低くなっていました。肝臓の状態を映す血液の指標も低い値です。肝臓の脂肪は、それぞれの群から選んだ20人ずつで測っています。

腸から血液に漏れ出た菌の膜の成分を表す指標も、低い値でした。腸の菌の並びも変わっています。

元の数字:牛乳と比べて、インスリン抵抗性の指標が−0.53(95%信頼区間 −1.03〜−0.02)、空腹時インスリンが−2.77mU/L(−4.91〜−0.63)、2時間後のインスリンが−25.5mU/L(−33.0〜−17.9)、ALTが−4.65U/L(−8.67〜−0.64)、肝臓の脂肪が−3.44%(−6.19〜−0.68)、肝脂肪率が−3.48%(−6.34〜−0.63)、血中のLPSが−0.31EU/mL(−0.48〜−0.14)。研究費は中国の国家自然科学基金と黒竜江省の研究基金から出ています。

この研究が調べていないこと

参加したのは、肝臓に脂肪のある中国の肥満の女性だけです。

原文:Yogurt improves insulin resistance and liver fat in obese women with nonalcoholic fatty liver disease and metabolic syndrome: a randomized controlled trial. Am J Clin Nutr. 2019;109(6):1611–1619.
doi.org/10.1093/ajcn/nqy358

集めたもの

194,458人を追いかけて。乳製品のなかで、ヨーグルトだけが糖尿病と逆を向いていた

ここからは、食べさせる試験ではなく、ふだんの食事を何十年も記録してもらった調査になります。

  • 194,458人
  • 20〜30年
  • 2型糖尿病15,156人
  • アメリカ

アメリカの大きな調査を3つ合わせたものです。男性41,436人を1986年から2010年まで、女性67,138人を1980年から2010年まで追いかけました。もうひとつ、別の女性85,884人を1991年から2009年まで。4年ごとに食べているものを書いてもらい、そのあいだに2型糖尿病になった15,156人を数えています。

乳製品全体では、差が出ていません。1日1食分増えたときの比は0.99。低脂肪のものも、高脂肪のものも同じでした。

ヨーグルトだけが違いました。1日1食分増えるごとに0.83。3つの調査すべてで同じ向きです。ほかの14の調査を足した459,790人の計算でも、0.82でした。

同じ乳からつくられていても、ヨーグルトのところだけ数字が動いている。この調査が見せているのは、その形です。

元の数字:1日1食分あたりの比は、乳製品全体が0.99(95%信頼区間 0.98〜1.01)、ヨーグルトが0.83(0.75〜0.92、傾向のp<0.001)。14の前向き調査・459,790人・35,863人の発症を集めた解析では、乳製品全体が0.98(0.96〜1.01)、ヨーグルトが0.82(0.70〜0.96)。追跡は延べ3,984,203人年。研究費はアメリカ国立衛生研究所(NIH)から出ています。

この研究が調べていないこと

食べているものを本人の申告で集めた調査で、加糖のヨーグルトと無糖のヨーグルトは分けていません。

原文:Dairy consumption and risk of type 2 diabetes: 3 cohorts of US adults and an updated meta-analysis. BMC Med. 2014;12:215.
doi.org/10.1186/s12916-014-0215-1(全文が無料で読めます)

観察研究

184,178人を追いかけて。週5回以上食べる人で、血圧が高くなった人が少なかった

ひとつ前と同じ集団を、今度は血圧のほうから見ています。

  • 184,178人
  • 最長30年
  • 週5回以上と月1回未満
  • アメリカ

比べたのは、週に5回以上ヨーグルトを食べる人と、月に1回も食べない人です。追いかけた長さは、集団によって最長で30年、20年、24年になります。

3つを合わせると、週5回以上の人のほうが、血圧が高くなった人が16%少なくなっていました。女性の2つの調査では、19%と17%です。

男性の調査では6%で、はっきりした差にはなっていません。

野菜と果物を増やす食べ方(DASH)の点数が高く、そのうえでヨーグルトもよく食べる人では、30%少なくなっていました。

元の数字:週5回以上と月1回未満の比較で、女性の2つの調査が19%(95%信頼区間 0.75〜0.87)と17%(0.77〜0.90)、男性の調査が6%(0.83〜1.07)。3つを合わせると16%(0.80〜0.88)。乳製品全体16%、牛乳12%、チーズ6%。体重の影響を差し引くと、乳製品13%・ヨーグルト10%・牛乳8%・チーズ8%。DASHの点数が高くヨーグルトも多い人は30%(0.66〜0.75)。研究費はアメリカ国立衛生研究所(NIH)から出ています。

この研究が調べていないこと

血圧が高くなったことを本人の報告で数えた調査で、加糖と無糖は分けていません。

原文:Long-term yogurt consumption and risk of incident hypertension in adults. J Hypertens. 2018;36(8):1671–1679.
doi.org/10.1097/HJH.0000000000001737

集めたもの

896,871人ぶんの調査を集めて。亡くなった人が全体で7%、心臓と血管の病気で11%少なかった

最後は、いちばん大きな集まりです。ここで、量の話が出てきます。

  • 17の調査・896,871人
  • 亡くなった人75,791人
  • 2022年8月まで
  • 2023年

ヨーグルトをよく食べる人と、あまり食べない人を比べた前向きの調査を17本集めています。あわせて896,871人。そのあいだに亡くなったのは75,791人で、うち心臓や血管の病気が14,623人、がんが20,554人です。

よく食べる人のほうが、亡くなった人が全体で7%、心臓や血管の病気で11%少なくなっていました。がんによる死亡には、差が出ていません。

1日1食分増えるごとに見ても、同じ向きです。全体で7%、心臓や血管の病気で14%。

ただし、この関係は途中で横ばいになります。1日半食分より多く食べても、そこから先は下がっていません。たくさん食べるほど、という形にはなっていないということです。

元の数字:よく食べる人とあまり食べない人の比較で、総死亡が0.93(95%信頼区間 0.89〜0.98、I二乗値47.3%、12件)、心血管の死亡が0.89(0.81〜0.98、33.2%、11件)、がんの死亡が0.96(0.89〜1.03、26.5%、12件)。1日1食分あたりでは、総死亡が0.93(0.86〜0.99)、心血管の死亡が0.86(0.77〜0.99)。1日0.5食分より多いところでは、それ以上の低下は見られていません。研究費はイランのタブリーズ医科大学内分泌研究センターから出ています。利益相反はないと申告されています。

この研究が調べていないこと

観察研究を集めたもので、加糖と無糖は分けていません。

原文:Yogurt consumption and risk of mortality from all causes, CVD and cancer: a comprehensive systematic review and dose-response meta-analysis of cohort studies. Public Health Nutr. 2023;26(6):1196–1209.
doi.org/10.1017/S1368980022002385(全文が無料で読めます)

この記事に入れなかったもの

読んだけれど、今回は入れなかったものです。差が出なかった研究も、ここに置いておきます。

食事の前にヨーグルトを食べた120人の試験。食後の体のなかの炎症の目印は下がりましたが、体で感じる変化を調べたものではないため、外しました。研究費はアメリカの全米酪農評議会から出ています(J Nutr 2018、doi)。

骨のこと。12の観察研究を集めた解析で、股関節の骨折にも骨密度にも差が出ていません(Front Nutr 2025、doi)。

大腸がんの解析。よく食べる人で少ないという結果ですが、思い出して答える形の研究が混ざっているため、外しました(Front Nutr 2021、doi)。

日本の若い人32人が4週間食べた研究。比べる相手のグループがなく、食後の血糖の曲線にも差が出ていません(Nutrients 2018、doi)。

試す前に

試してみたいものが見つかった場合は、現在かかっている医師に確認してください。服用中の薬との相互作用や体調については、その医師が最も正確に判断できます。